約 571,015 件
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2428.html
213 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/10/29(土) 20 52 19 ID MPaMNP4Q 「ちょっと待て!」 この瞬間、世界はキサラギの敵になった。 ちょっとしたお遊び。 あるいは、 ちょっとした悪ふざけ。 世界はそんな茶目っ気を許さず、あっさりキサラギを捨てた。 心臓の鼓動がうるさい。 カウンターの上に、一冊の漫画が乗っている。値段は……忘れた。そんなに高くない。 注目する客の視線は、まずは好奇心。 続いて侮蔑。 最後にカウンターの漫画を一瞥。そして嘲笑。 今すぐ世界が終わればいいのに。 そんなことを考えるキサラギの耳に、世界は遠い。 まるで夢の中のように。 世界は無音だ。 目の前で中年男が、嗜虐的な笑みを浮かべ、何かのたまっているが、それはキサラギの耳にも心にも遠い。 あまりに遠い。 無音の世界。 全てはあまりに虚ろだった。 そんな中、彼と目が合う。 カウンターをチラリ。 彼の眉がハの字に寄る。 (なんだそれ……つまんねえの……) おかしい。 全ての情報をシャットアウトしたはずのキサラギの心に届く声。 (しょうがねえな…今回だけだ…) まただ。 おかしい。 世界は自分を捨てたはず。だからこんなにも音がない。 こんなにも虚ろなのに――― 激しい衝撃音。 金属製の本棚が前倒しになり、四方に雑誌をバラまいた。 キサラギは、虚ろな目で彼の視線を捕まえる。 (ほれ、今だ) また聞こえた。 ふらっと足が一歩を踏み出す。 後は、勝手に足が動いた。 すれ違いざま、目が合う。 口元が少し笑ってる。 多分、自分も笑ってる。 こうして、キサラギは世界に帰還した。 逃げ込んだ路地裏で、キサラギは大きく肩で息をしながら、夕焼けに染まる空を見上げた。 ああ、世界はこんなにも美しかったのだ。 九死に一生を得た。あのまま行けば、自分はどうなったか。それは想像したくない。 しかし…あの少年は…… キサラギは首を振った。 もう会うことはないだろう。そう思った。 この時は。 春。 つつがなく受験を終えたキサラギは、第一志望の高校に入学する。 「リューヤ!おい、リューヤ!」 青い襟章が目印の二年生の男子生徒が、一人の少年を呼び止める。 その少年は、ちょうどキサラギの前を歩いている。 「…俺の名前を、安売りみたく連呼するな。気持ち悪い!」 少年が振り返る。 それが全てのはじまり。 214 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/10/29(土) 20 53 11 ID MPaMNP4Q 「な、リューヤ!ノート見せてくれ!」 「知らん」 リューヤは気付かない。 一人の少女……キサラギが瞬きすら忘れてその背中を見つめていることを。 「な!リューヤ、この通り!」 「…しょーがねえな…今回だけだぞ」 ああ、そうだろう。キサラギが知る彼ならそう答える。 「リューヤったら、もう!そんなこと言って、いつも助けてくれるくせにぃ…」 「変態!まとわりつくな!」 抱きついて来た男子生徒と肩を叩き合い、談笑しながらリューヤは去る。 「先輩……リューヤ先輩!」 勝手に動いた口を押さえ、キサラギは、あっと後ずさる。 リューヤは少し気まずそうに振り返る。 「はぁ…あのな、せっかく知らん顔してやったのに、自分から話しかけるヤツがあるか」 キサラギの胸が大きく一つ跳ねる。 (覚えててくれた!) 初恋だった――。 それは、不意にやって来た嵐。 嵐はどこまでもキサラギを翻弄する。 必死になって気を引いて、必死になってかき口説く。 対するリューヤの口癖は、 「また今度な」 都合のいい言葉だ。相手を傷つけず、やんわり断るには一番いい言葉かもしれない。 キサラギは空回り、気ばかり焦る。 そんな中、雨が降る。 全力疾走のリューヤは、すれ違ったキサラギには目もくれず、一直線に校門目掛けて走っていく。 そして、見てしまった。 リューヤが、鞭打たれたような苦しげな表情で、一人の少女の肩を抱き寄せている光景を。 あれは、なんだ? 時間が止まった。 あれは、守っているのだ。キサラギはすぐに理解した。 リューヤは守っている。この世界の全ての悪意から、少女のことを守っている。 世界が回る。 自分は何をしているのだ。指をくわえて見ているのか。 なぜ、自分はあそこにいない。 あの少女……ああ…あれがそうか。 リューヤにフられて手首を切ったとかいう。 「おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい……絶対、おかしい」 間違っている。 キサラギは、よろよろと歩き出す。 あの少女……未夢とかいったか。 受験に失敗したらしいが、彼女は絶対馬鹿じゃない。 最初から知っていたのだから。 己が、全身全霊で寄りかかっていい存在を。 生まれてから死ぬまでの間に、いったい何人の人間がそんな存在を見いだすことができるのだ。 何故、自分はあの少女になれなかったのか。 215 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/10/29(土) 20 53 42 ID MPaMNP4Q きっと、覚悟が足らなかったのだ。 だからこんなおかしなことになる。 覚悟だ。 どうしてもあれが……リューヤが欲しい。 この世界は、キサラギには寒過ぎる。 虚ろに過ぎる。 覚悟だ。 それだけでよい。 だって、あの少女は、それだけでリューヤを手に入れているではないか。 キサラギは覚悟を示す必要があった。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/702.html
381 :ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/04/06(金) 00 51 33 ID oKsZ0FHK 俺は、メイド喫茶の店長というものをやっている。 店長という肩書きが引っ付いているが、実際店を回しているのは副店長で、 俺は椅子に座っているだけで、何も(と言っちゃなんだが)していないようなものだ。 俺がやっていることは、モニタを見ることと、スイッチを押すことと、メールを見ることだけ。 ひとつずつ説明していこう。 まずはモニタについて説明する。 モニタには、喫茶店の、内外の様子が映っている。 つまり、仕掛けてある監視カメラの映像を見ているのだ。 事務所の中に置いてあるモニタの数は6つ。 喫茶店の入り口から路地を見渡すように一つ。 店内に四つ置いてあるテーブルをそれぞれ監視するために、四つ。 カウンター内にいる店員の頭上からカウンター席を望むように、一つ。 いずれも、客が不審な行動をしていないかを監視するために設置されている。 たとえば――入り口に一番近い位置にあるテーブルに座っている若い男。 文庫本などを読みながら、注文の品が届くのを待っている。 たった今、本を畳んでしおりを挟み、それをテーブルの上に置いた。 大きく伸びをして、あくびをしている。 誰にも見られていないと思っているのだろう。 天井に顔を向けながら、顎が外れんばかりに口を開けている。 しかし、監視カメラを見ている俺からは、男の口内がよくわかる。 店員のメイドの一人が、トレイの上にカップを乗せて男のいるテーブルにやってきた。 男はあくびをやめて、腕をテーブルの上に置いた。 テーブルの上に置かれたカップを左手で持ち、唇をつけた。 そして、ソーサーの上にカップをもどすと、また文庫本を手にとり読み始めた。 店員はそのテーブルに背を向けて、立ち去った。 男は文庫本片手に、カップの中にある液体をちびちびと飲んでいる。 どうやら、まだこの男は10回目に達していないらしい。 普段ならこの時点で眠気を催して、テーブルに突っ伏しているからだ。 もしくは、店員がテーブルに近づいた時点でカップの中身を男にぶちまける。 その後で、その男は店の奥に連れて行かれるはず――おや? 383 :ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/04/06(金) 00 52 33 ID oKsZ0FHK 先ほどまでカウンター席に座っていたスーツ姿の男が立ち上がって、 店員に向かって何かを言っている。 彼の前にいる店員は、ぺこぺこと何度も頭を下げている。 監視カメラに併せて集音・録音用のマイクを設置したりはしていないのでよくわからないが、 男がジャケットを脱いでそれに顔を近づける様から考えるに、店員が粗相をしてしまったようだ。 普通の店ならこの場で店長なりが登場するのだが、生憎俺はそんな面倒なことはしない。 カウンターの前にいる男は店員に何か怒鳴っている。 彼に向かって、店員が申し訳なさそうに頭を下げる。 店員のメイドが何かを喋ってから、男の手をとった。 店員は男を奥へ引っ張っていこうとするが、男はその手を振り払った。 カウンターに背を向けて、男は喫茶店の入り口へ向かって歩いていく。 ――どうやら、出番が来たようだ。 数少ない俺の仕事の一つ。 事務所の机の上を占領しているスイッチ類の操作。 数にして、およそ……50ぐらいだろうか。 ときどき無造作に増えているのでよく覚えていない。 ともあれ、今回のような『10回お店に来たお客様へのサービス』を拒む、 入り口へ向かって今も歩き続けている男に対しては、『car-2』スイッチを使う。 スイッチを押す。すると、カチッ、とあっけない音がした。 店先を映し出している監視用モニタを見る。 路地に停めてあるミニバンタイプの乗用車が動き出した。 乗用車には、もちろん人が乗っている。 運転ばかりは、ここにあるスイッチでは役不足というものだ。 今のスイッチは、ただミニバンの運転手に合図を送るためだけのものだ。 店の入り口と壁に張り付くように、ミニバンが停車する。 それを確認したあと、店内の様子を監視カメラで観察すると、 スーツのジャケットを腕にかけた男が入り口のドアを開けようとしていた。 喫茶店のドアは外開きになっているので、今のように外に車が停車していたら、もちろん開かない。 男は扉に向かって怒鳴ったあと、先ほど粗相をしたメイドの元へと向かう。 彼がジャケットを店員に手渡すと、店員が笑顔を浮かべたのが、俺からも良く見えた。 店員のメイドが男の腕を掴むと、男はたたらを踏みながらそのままメイドの腕に引っ張られて、 カウンター横のドアをくぐっていった。 ――さて、仕上げだ。 手元の、『K-01』スイッチを人差し指で軽く押す。 しかし、特に何が起こるわけでもなく、店内はいつもの静けさを保っていて、 店員のメイド達も普段の業務へとすでに戻っている。 では、このスイッチがなんなのか、というと。 ――かいつまんで言えば、お客様へ向けた、当店のサービスです。 384 :ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/04/06(金) 00 53 48 ID oKsZ0FHK 最後に、メールについて。これが一番簡単な仕事だ。 事務所においてあるPCに届くメールを見て、プリントアウトすることだけ。 送り主は女の子ばかりだ。では、ついさっき届いたばかりのメールの内容を紹介するとしよう。 ----------------------------------------------- タイトル: お店で働かせてください 本文: 先日、A町の街頭でお会いした者です。 名前は、T村K子です。年齢は19歳。大学生です。 私と彼の近況を明記してください、とのことでしたので、以下に記します。 私と彼は大学の同じサークルに所属しています。 講堂でも、お互い隣同士の席になることがよくあります。 いつも、彼のほうから私の隣に座ってくるんです。 彼は、私のことが好きなんです。そうに決まっています。 でも、一つ問題があります。 彼の姉と名乗る人物が、私たちの仲を壊そうとしてくるんです。 この間、私は彼のためにお弁当を作りました。 腕によりをかけて、愛情をいっぱい、いっぱい込めました。 お弁当を持って、昼食の時間に彼を探し出しました。 そのとき、彼の隣には女が座っていました。 私はあふれ出す怒りを押さえ込み、彼らの隣に偶然を装って近づきました。 彼の隣に座っていた女、彼の姉の目といったら、もう、憎くてたまりません。 『なによあんた』『私の弟に近づかないで』 『あんたみたいな他所の女に弟は渡さないわ』という、独占欲が丸出しになっていたのです。 私は彼に弁当を渡すことなく、その場を立ち去りました。 大学から家に帰って、私は泣きました。 せっかく作ったお弁当を彼に食べてもらえなかった。 あの時、無理矢理にでも押し付けていけばよかった、と後悔しました。 何時間も泣き続けて、泣きつかれて眠って、起きたときに私は決断しました。 彼を、絶対に私のものにする、と。 そのためには、彼をあの女の手の届かない場所に連れて行くことが一番だと考えました。 あなたの言うとおりに、誰も知らない場所に監禁してしまえば、 あの女もきっと彼を諦めるに違いありません。 お願いです。私をあなたのお店で働かせてください。 どうしても、私は彼が欲しいのです。 彼も、私に監禁されることを望んでいるに決まっています。 最後に、彼の名前と年齢を記します。 O谷Tくん。19歳です。 他にも必要な情報がありましたら、連絡をいただければお教えします。 ----------------------------------------------- 385 :ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/04/06(金) 00 54 56 ID oKsZ0FHK 事務所にあるPCに届くメールは、どれもこんな内容ばかりだ。 決まって、メールを送ってくる相手は年頃の女の子だ。 そして、男を手に入れるためにここで働きたい、ということが必ず書いてある。 ちなみにメールに書かれている『あなた』というのは、俺のことではない。 『オーナー』のことだ。 『オーナー』が、どんな人物なのかとか、何歳なのかとか、俺は何一つ知らない。 ただ、副店長の父親だということだけがわかっている。 副店長は、18歳の女の子だ。 身長は、160cmぐらい。 スリーサイズは、俺の目測では93・60・89。カップはF。 体重は、怖くて聞いていない。 ただ、いつも俺の体に乗ってくるときにそれほどの重さを感じないから、 体型に合わせたぐらいのものだと思う。 髪型はおかっぱで、メイド服と組み合わせるとかなりいい感じになる。 彼女がいつも浮かべている微笑からは、幻想的というか、非現実的な印象を受ける。 とはいえ、顔立ちがいいからいつもその笑顔を見ているだけで俺は癒されてしまう。 副店長――春香は、俺の恋人でもある。 俺たちの関係は、このメイド喫茶に俺がお客としてやってきたことから始まった。 そのころから、春香は喫茶店でメイド服を着ていた。 当時はまだ、副店長ではなかった。俺が店長になってから彼女も副店長になったからだ。 一目見た時から、俺は春香に惚れてしまった。 さきに挙げたように、周りにいるメイド達と比較しても際立つ魅力を放っていたからだ。 あの頃の俺はまだ女を口説くことに慣れていなかったから、声をかけることができなかった。 だから、春香に会うために俺は何度もこのメイド喫茶に足を運んだ。 椅子に座ってコーヒーを注文して、しばらく待っていると春香がトレイにカップを乗せてやってくる。 彼女が優雅な仕草でテーブルの上にカップを置く。 ナプキンを敷いて、ミルクと、砂糖と、銀製のスプーンをその上に置く。 春香は「ごゆっくりおくつろぎくださいませ」と言って頭を下げる。 きびすを返し、コツコツ、と小さな音を立てながら、俺のいるテーブルの前から居なくなる。 その一連の動作と、彼女の微笑を見ているだけで、俺の胸は締め付けられた。 ――春香が欲しい。 ――俺のものにしたい。 ――彼女を、抱きたい。 メイド喫茶にあししげく通っていたころの俺は、いつもそう考えていて、 その考えがそのまま目に宿っていたのではないか、と今では思う。 普通に考えれば、通報ものだ。 ともあれ、10回メイド喫茶に通うことになったあの日。 ――願いが、現実になった。 389 :ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/04/06(金) 02 42 13 ID oKsZ0FHK : : : 大学からの帰り。 人でごったがえしている都内の大通りを俺は歩いている。 大通りに面する場所には、色々な、多種多様な店舗が軒を連ねている。 大手百貨店、大型電気店、数十階建てのビルに、古今東西の料理店。 通行の邪魔になるような小型の立て看板を手でどけて、人の波を避ける。 ――めんどくせえ。 しかし、それでも俺の足は浮き足立っていた。 まるで天にも昇ろうかという気分ですらあった。 それは何故かというと、春香のいるメイド喫茶へと向かっているからだ。 今から春香の癒しの笑みを拝むことができるかと思うと、人の波もなんのその、というやつだ。 ホームセンターとコンビニの間に置いてある立て看板をどけて、通り抜けてからまた元に戻す。 人が一人余裕を持って通れるぐらいの幅の路地に入ると、 俺はいても立っても居られなくなり、駆け出した。 ――この先に、春香がいる。 それだけしか、今の俺の頭の中にはない。 それ以外は考えない。走りながら、勢いをつけすぎて軽く前のめりになる。 倒れそうになったところで、体を軽く前に倒して足を強く踏み込む。――倒れずに済んだ。 ボロボロの服で春香に会うなど、俺にはできない。 そうなったら今日は春香と顔を合わせることもできない。 こけるわけにはいかないのだ。 その後はスローペースで路地を走って、メイド喫茶の前に到着した。 緊張で震える手で、喫茶店のドアの取っ手を掴み、静かにドアを引く。 喫茶店の店内が、良く見えた。 木製のフローリングになっている床。 右手にふたつ、左手にふたつ、向かい合わずに交互に並ぶテーブル。 グラスやカップや大小の皿が納められた食器棚が奥に置いてある、カウンター。 そして、入り口のすぐ近く。 俺の立つ場所から見ると、右斜め前の位置。 「おかえりなさいませ。ご主人様」 メイド服を着て、ほほえみを浮かべる春香がいた。 390 :ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/04/06(金) 02 43 01 ID oKsZ0FHK 「お席に、ご案内させていただきます」 春香が優雅に頭を下げる。俺は首を軽く前に倒した後で、店内に足を踏み入れた。 春香は音を立てるなと命じられたかのように、小さな靴の音を立てて、前を歩いている。 思わず、その後ろ姿に息を呑んだ。 そのまま近づいて、彼女の細い体を抱きしめたくなったが、自分を叱り付けてそのまま歩く。 「こちらのお席にどうぞ」 春香がカウンター前の椅子を引き、座るよう促した。 無言でその椅子に座る。音を立てないように。クッションをゆっくりと潰すように。 「何にいたしましょう。ご主人様」 ――君を。 などとは言えるはずもなく、「コーヒーをください」とだけ告げる。 「かしこまりました。それでは、少々お待ちくださいませ」 そう言って、春香は手を前に合わせて、カチューシャを見せるように礼をした。 後ろを振り返り、春香はカウンターの中へと入っていった。 店内をカウンター席から見回す。 どのテーブルにも客はいないし、他のメイドさんもいなかった。 時刻はまだ四時を少し過ぎたばかりだというのに、めずらしいこともあるものだ。 「~~♪」 カウンターの向こうから、春香の鼻歌が聞こえる。 コーヒーを淹れながら、彼女は目を細めた、優しい笑顔でそこにいた。 彼女が嬉しそうにしていると、俺の心の中にも花が咲く。 そのまま、春香のハミングを目を閉じたまま聞いていると、しばらくして歌が止まった。 春香が、コーヒーカップをトレイに乗せて、カウンターから出てきたのだ。 「ご主人様。コーヒーをお持ちいたしました」 メイド服を着た春香が、左掌の上にトレイを乗せて俺がいる席の前へとやってきた。 コーヒーカップが乗せられたソーサーの縁を右手で持って、カウンターの上に置いた。 同じくカウンターに置かれたミルクと砂糖を入れようと手を伸ばすと、白い手が横から伸びてきた。 391 :ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/04/06(金) 02 43 44 ID oKsZ0FHK 「今日はご主人様が来られてから10日目になりますので、私めにやらせてくださいませ」 そう言うと、彼女は砂糖を入れて、次いでミルクを入れた。円を描くように。 コーヒーと乳白色の液体をスプーンで混ぜたあと、カップを差し出された。 「どうぞ。お召し上がりください」 右手の人差し指をカップの取っ手に回し、コーヒーを飲む。 いつもより、美味い。 なぜだろうか。――いや、愚問だな。 春香が淹れたコーヒーに、春香が入れた砂糖とミルクが合わさっているのだ。 俺の味覚は、これ以上美味いものは存在しない、と断言している。 そのコーヒーを味わって飲んでいるうちに、いつのまにかカップの中身が空になった。 残念に思いながら、カップをゆっくりとソーサーの上に置いた。 すると。 「ご主人様。もう一杯、いかがですか?」 春香がポットを持って、俺におかわりをすすめてきた。 せっかくの誘いを断るわけがない。 俺は「いただきます」と言って、コーヒーを淹れてくれるよう頼んだ。 ポットから、黒と琥珀の中間の色をした液体がカップに注がれる。 春香がコーヒーを注ぎ終わったあと。 なんのはずみかはわからないが、彼女の手が滑ってポットが俺の膝の上に落ちてきた。 膝の上で一旦止まり、ポットが床に落ちる。 ――ガシャン という音を立てて、ポットが割れた。 「も、申し訳ありません!」 と言って、春香が床に膝をつき、布巾を持って俺の膝を拭き始めた。 彼女は泣きそうな目をして、俺のジーンズを布巾で擦っている。 そして、彼女の手が右膝から左膝に移ったとき。 ――ドクン 心臓の音が俺の耳に届いた。 392 :ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/04/06(金) 02 44 54 ID oKsZ0FHK 春香はしゃがんで、俺の――股間の前にいる。 彼女の目は潤んでいた。 今にも泣き出しそうな顔をしていた。 その顔を見ているうちに、俺は、自分の喉が締め付けられるのを感じた。 普段より、目が大きく開いた。 目は、初めのうちこそ春香の顔を見ていたが、いつのまにか視線が下へと向かっていった。 その先には、メイド服のエプロンを押し上げている、春香の胸がある。 俺の手はポットが落ちたときの驚きで肩の辺りに上がっていたが、 その手が、肘が、腕が、うずうずとしていた。 手が震えている。 寒いわけでも、武者震いをしているわけでもなく、勝手に動いている。 俺の意識は「動くな」とだけしか言わないが、頭の奥の深い部分が言っていた。 ――――春香を犯せ。 ジーンズに押さえつけられている肉棒が脈を打った。 睾丸の辺りから骨盤を通り、へその下の部分に得体の知れないものがたまり始めた。 ――これは、肉欲だ。 「ご主人様? どうなさいましたか?」 春香の声が、下から聞こえた。 それは俺の耳だけに聞こえるはずだったが、股間にまでその声が響いてきた。 怪訝な顔をして、春香が俺の顔を上目遣いで見つめてきた。 奥歯を強くかみ締める。 鼻から大きく息を吸う。 唇を固く、離れないように強く押し付ける。 それで、なんとか体の感覚を春香に向けないようにすることができた。 が。 「ご主人様……?」 春香の白い顔が俺のすぐ目の前にやってきて、 俺は――顔の力を抜いた。 393 :ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/04/06(金) 02 45 48 ID oKsZ0FHK 両手で春香の顔を鷲づかみにする。 柔らかい髪が俺の指の先をとおりすぎ、指の間に埋まった。 春香は口を薄く開けて、俺をまっすぐに見据えている。 彼女の唇が薄いピンク色をしていることを理解したあと、そのあとは何も考えずにキスをした。 策も、技も、加減もなかった。 ただ、彼女の唇に自分の唇を合わせて、舌を突き出した。 彼女の舌を求めて、俺の舌は動き出す。 春香の舌の先端を、舌の裏を、舌のくぼみを舐める。 舌の先端に、意識は全て集中していた。 春香の舌は、俺の舌のなすがままにされていた。 従順に、荒い波に揉まれつづけるようにたたずんでいた。 唇を離す。 春香は呆然として俺の目を見つめている。 けれども、その目に嫌気が混じっていないことを悟った俺は、再度くちづけた。 今度は、唇を当てて、舌で舐めるだけではなく、頭までが動いた。 首の力を使って、唇を強く押し付け、舌を深く突き出す。 俺が首を左右に振りながらキスをしていると、春香の首までもが応えるように動き出した。 「ん、ふぅ……はぁ、ん……」 お互いが首を曲げるたびに唇の結び目から声が漏れる。 しかし、俺も、春香も唇をくっつけたまま、離そうとはしない。 この熱を、放したくなかった。 春香の脇に、左右それぞれの手を差し込み、彼女を立ち上がらせる。 まだ、お互いの唇は離れていない。 手を春香の背中に回し、抱きしめる。 柔らかい。 まるで、ぬいぐるみかなにかのように、ふわふわしている。 春香の頭に手を当てて、さらに強く唇を押し付ける。 もう――止まることはできない。 その体勢のまま、春香の体を抱えるようにして前進する。 喫茶店に置いてあるテーブルに、春香の体がたどりついた。 そのまま、春香をテーブルに押し倒す。 394 :ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/04/06(金) 02 47 36 ID oKsZ0FHK 一旦唇を離す。 俺と、春香の唇が結びついていた証のように、透明な細い糸が伸びる。 春香を見る。 顔が紅い。 目は潤んで、目じりは垂れ下がっている。 俺が見ていることに気づいたように、口の端を少しだけ上げて笑った。 その笑顔はいつも俺の心を癒すものだった。 が、今ではその笑顔すらも蹂躙することができる。 ――その一手が俺には与えられている。 首を下に曲げて、春香の胸を見る。 呼吸に合わせて、上下に動いている。 二つのふくらみが、メイド服の胸元を押し上げて、その存在を主張している。 膨らみの頂点に向けて伸びるしわを見ているうちに、俺はそれに手を伸ばしていた。 両手でエプロンの上から乳房を揉む。 柔らかな、布の感覚が両手にある。 だが、――物足りない。 左手を春香の背中に回し、エプロンの結び目を探る。 丁度、腰のうしろに布の塊があった。 力任せに引っ張る。すると、結び目がよりいっそう大きくなり、解けなくなった。 何度やっても解けない。 ――ならば。 エプロンがずれないようにするための、肩の布を引きちぎった。 エプロンをひっぺがすと、今度はブラウスが現れた。 左右の布を結び付けているのは、小さくて、黒いボタンだった。 両手の指をボタンの間につっこむ。 勢いよく腕を、外に向けて開く。 「あっ……」 ピンクのブラジャーがそこにはあった。 小さなフリルのようなものが、アクセントとして飾り付けられていた。 その形と色は俺をさらに興奮させた。 背中に手を回し、手探りでホックを取り外す。 背中から、ゆっくりと体に這わすように、手で下着と肌を引き剥がして、体の前に持っていく。 正面に手がやってきた時点で、そのまま手で布を押し上げる。 そこには、春香の乳房があった。 下着をつけていなくとも、それは形を崩すことなく、そこにあった。 右の乳房の頂に、くちづける。 唇の先で甘噛みすると、それは柔らかい感触を残したまま、潰れていく。 一度唇を離す。 今度は舌を唇から突き出し、ぺろり、と舐める。 すると、春香の口から喘ぎ声が漏れた。 舌を動かすたびに、その声はさらに甘さを増していく。 395 :ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/04/06(金) 02 48 28 ID oKsZ0FHK ロングスカートを手で掴む。 それは何度か手を往復させていないと完全に捲くれないものであったが、 何度か、繰り返していく内にスカートの縁が俺の手の中におさまった。 春香の白い太腿に、口をつける。 舌で押しやると、柔らかく押し返す。そんな感触だった。 ショーツの上から秘所に手を当てると、そこはすでに愛液が溢れていて、ぐっしょりと濡れていた。 親指をそこに当てて、軽く押す。 「…っん、くぅ…はあっ……」 それだけで、春香の両足に力がこもった。 続けて、強く押したり、上下に押しやる。 そのたびに春香の白い足は力を込めて動き出す。 腰に手を当てて、ショーツの端を指で引っ掛けて、膝を通り、足首から脱がせる。 俺の目の前には、彼女の膣口があった。 そこからはすでに彼女の愛液が滴り落ちていて、スカートにしみを作っていた。 舌をその割れ目に這わせて、舐め上げる。 「る、ぁ、めぁぁ……ごしゅ、じ…ん……ぁ…」 幾度となくそれを繰り返すうち、彼女の陰裂はふるえてきた。 春香の足も、ふるふると動いていた。 両手で、彼女の腰に手を回す。 テーブルの上から、彼女の腰だけをはみ出させるようにする。 俺は、下半身を覆う全ての衣服を脱ぎ捨てて、それから、彼女の体と向かい合う。 目の前には、春香のあられもない姿があった。 口からはよだれを垂らし、胸元を隠す衣服は破かれ、白い乳房がむき出しになっている。 そして、俺の腰の前に、春香の陰裂がある。 へその下から彼女の体にぴたりと体を合わせて、少しずつ腰を近づける。 亀頭を春香の入り口に当てて、そして、一気に腰を突き出す。 春香の口から、叫び声が飛び出した。 その声が、まるで誘っているような響きに聞こえてくるほど、俺はおかしくなっていた。 腰を突き出して、肉棒を深く突き刺し、一気に引き抜く。 「ご、ぉっ、し……いん…ああ! …さ……ふぁっ!」 突き出すと春香は歓喜の声を上げる。 引き抜くと、切ない声を上げる。 ――たまらない。 止まることなど、熱に浮かされた体では考えもつかなかった。 じゅ、じゅ、という音が聞こえてきた気がする。 だが、俺には春香の喘ぎ声しか聞こえない。 そして、大きく、理性の壁を破壊する流れが股間に集中して――俺は果てた。 396 :ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] :2007/04/06(金) 02 53 47 ID oKsZ0FHK そのあとは、よく覚えていない。 欲望が爆発して、そのときの記憶を頭と体から、おしやった。 その後で、体を包む倦怠感とともに目を覚ましたとき――俺は、椅子に縛り付けられていた。 : : : 俺の足首とパイプ椅子は、手錠でつながれている。 そのため、腰を浮かすことはできても歩くことはできない。 初めて自分の置かれている現状を見て、俺は「監禁されている」と理解した。 だが、特に不満なことはない。 用を足すときや、風呂に入るとき、服を着るときには、春香が錠を解いてくれるからだ。 できれば食事も自分の手で食べさせて欲しいものだが、嬉しそうな春香の顔を見ていると、 何も言うことができなくなって、俺は春香のなすがままになってしまう。 そして、今もそう。 たったいま事務所にやってきた春香が、俺の前で両手を合わせながら、語りかけてくる。 「ご主人様。ごきげんいかがでございますか? 今日も、お二方が結ばれましたよ。 男性に手錠をかけて、ベッドに押し倒し、目隠しをしたときのあの女性の表情は、 本当に幸せそうで……私も、思わずご主人様に同じことをしたくなってしまいましたわ。 そうそう。また明日も一名、この喫茶店で働きたいという方がやってくるそうです。 きっと、彼女たちも結ばれますわよ……私達のように。 うふふふふ……本当に、本当に、なんと楽しいことなのでしょう。 お父様のおちからが冴えている、ということですわ。 このままゆけば、きっと……私達はさらに素晴らしい存在になれますわ。」 『――――うふふふふ』 女性の笑い声が聞こえてきた。 その声は、俺がこの椅子に座ってから、何度も聞いてきたもの。 そして、俺はこの声を聞くために、ここに座っている。 そして、これからも座り続けるだろう。この喫茶店がここにある限り。 終 -------
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2537.html
842 名前:ヤンデレ☆レモン[] 投稿日:2012/08/30(木) 17 16 47 ID .qf.IqEE [1/2] 一話 俺には一人の幼馴染がいる。 その名前は「舟山 御崎」(ふなやま みさき) そして俺の名前は(木葉 樹理)「このは じゅり」 御崎「樹理くーん!おっはよ~☆」 樹理「朝から元気だなぁお前は・・・・」 いつもいつも元気な御崎にはかわいいところがいくつもあって それは恋心というのか? 学校にて 美鈴「おそいぞ~お話しすることがいっぱいあるっていうのに・・・」 樹理「ごめん、ごめん・・・」 彼女の名は「槐羅 美鈴」(えんじゅら みすず) このクラスの学級委員長ですごく真面目 遅刻しそうになると軽くしかるけど 遅刻した時だったら本気で起こる しかも上級生にも目を付けていて 校則違反のものを持ってきていたらすぐ叱る だからそんなに友達のいないさびしい女だった でもみんな逆らえない だってこいつはこの学園の理事長の娘 つまりは金持ち 金さえあれば何でもできるやつだから 逆らえば終わりってところだ。 親いなけりゃ逆らっても意味なしなんだがな 泰知「うざいよ~真面目ちゃん #9825;」 こいつは槐羅をよくからかう俺の友達の泰知 でもこいつは槐羅が好きらしい うざいとかいうと可哀想じゃねえか 御崎「美鈴ちゃんなんかほっといて早く席に着こう 樹理君 #9825;」 やっぱりこのクラスで一番可愛いのは御崎だわ ある日の事だった 俺は告白された 同じクラスの結構モテモテの女の子に・・・ 放課後… 御崎「樹理君に告白した子ってチヤホヤ知れて調子乗ってる しかも男子の前では鼻声の矢部愛華ちゃんだよね?」 樹理「あぁ、、見てたのか・・・」 御崎「うん、迎えに来たら告白されてたから。あの子と付き合うの?」 いやいや、俺はお前が今好き?だし 御崎は無言で帰って行った いや、先に帰られた さっさと歩いてしまったので・・・ 翌日・・・・ 何と矢部は死んだんだ 何か知らないが指にくぎがいっぱい刺さってて ナイフでいっぱい刺されてたらしい 御崎「へぇ、死んだんだ…」 続く
https://w.atwiki.jp/zensensyu/pages/2051.html
男ヤンデレ 862 名前:水先案名無い人 :2008/02/05(火) 11 57 07 ID RFcK+hnq0 全男ヤンデレ入場!! 腐女子殺しは生きていた!! 更なる研鑚を積みトンデモ凶器が甦った!!! 武神!! クリード・ディスケンスだァ――――!!! 総合シスコンはすでに我々が完成している!! 中国マフィア雪代縁だァ――――!!! 巡り会いしだい結婚まくってやる!! 変形復活代表 シーモア・グアドだァッ!!! 射撃の訓練なら我々の才能がものを言う!! 素手の訓練生 ドーナツイーター 微笑みデブ!!! 真のフェティシズムを知らしめたい!! ラバーフェチ 長瀬渡だァ!!! 生徒会は3階級制覇だが洗脳なら全階級オレのものだ!! 毒電波 月島拓也だ!!! 敗北対策は完璧だ!! 十本刀 百識の方治!!!! 全スタンドのベスト・攻撃力は私の中にある!! 三部の神様が来たッ ヴァニラ・アイス!!! タイマンなら絶対に敗けん!! アームスレイヴのケンカ見せたる 傭兵隊長 ガウルンだ!!! 虚軸(なんでもあり)ならこいつが怖い!! ラノベのピュア・シスコン 津久見奏だ!!! 世界的名作から炎の科学者が上陸だ!! マッドサイエンティスト 天馬博士!!! ルールの無いストーキングがしたいからしたっぱ(パシリ)になったのだ!! プロのつきまといを見せてやる!!坪内地丹!!! めい土の土産に核攻撃とはよく言ったもの!! 電人の英知が今 実戦でバクハツする!! 脳科学者 春川英輔先生だ―――!!! 世界奇書級チャンプこそが地上最強の代名詞だ!! まさかこの男がきてくれるとはッッ 呉一郎!!! 愛したいからここまできたッ キャリア一切不明!!!! オペラ座のピット(仮面)ファイター ファントムだ!!! オレたちは立ち技最強ではない格闘技で最強なのだ!! 御存知殉星 シン!!! ヤンデレの本場は今やラノベにある!! オレを驚かせる奴はいないのか!! カロマイン・セロだ!!! ヤォォォォォイ説明不要!! 漆黒の薔薇!!! 光クラブ!!! ジャイボだ!!! 鎌は実戦で使えてナンボのモン!!! 超実戦チェーンソー!! 本家Gファンタジーからグレル・サトクリフの登場だ!!! マリアローズはオレのもの 邪魔するやつは思いきり殴り思いきり蹴るだけ!! 汚れし者どもの国の王子 アジアン 自分を試しに日本へきたッ!! ストリートチャンプ 坂本ジュリエッタ!!! スタンドに更なる磨きをかけ ”神父”エンリコ・プッチが帰ってきたァ!!! 今の自分に故郷はないッッ!! ヒトラーユーゲント アドルフ・カウフマン!!! スクウェア四千年の技が今ベールを脱ぐ!! 7から セフィロスだ!!! 映画ファンの前でならオレはいつでも全盛期だ!! 燃える逃避行 クライド・バロウ 本名で登場だ!!! 医者の仕事はどーしたッ 狂気の炎 未だ消えずッ!! 活かすも殺すも思いのまま!! ハンニバル・レクターだ!!! 特に理由はないッ 吸血鬼が強いのは当たりまえ!! インテグラにはないしょだ!!! 日の下開山! アーカードがきてくれた―――!!! 暗黒街で磨いた実戦棒術!! シリアルキラーズのデンジャラス・歯抜き 荊王だ!!! 誘拐だったらこの人を外せない!! まさかの黒幕 ガーランドだ!!! 超一流悪役の超一流のポジティブだ!! 生で拝んでオドロキやがれッ からくりの鋼鉄人!! フェイスレス!!! 不死身咒式はこの男が完成させた!! ベギンレイムの切り札!! バモーゾだ!!! 若き王者が帰ってきたッ どこへ行っていたンだッ チャンピオンッッ 俺達は君を待っていたッッッ碇ゲンドウの登場だ――――――――ッ 加えて負傷者発生に備え実世界のヤンデル男を4名御用意致しました! 毒殺男 グラハム・ヤング!! 解体者 エドガー・ゲイン!! 東洋の巨人 都井睦夫! ……ッッ どーやらもう一名は逮捕が遅れている様ですが、発見され次第ッ皆様にご紹介致しますッッ 関連レス 866 名前:水先案名無い人 :2008/02/05(火) 12 23 11 ID nWsbG5C+0 乙。男ヤンデレとは新機軸で感心した 個人的には長瀬渡がチャンピョンのような気になるけど…好き好き大好きが来るとは恐れ入った。 が、ゲンドウは若くねえだろ! 891 名前:水先案名無い人 :2008/02/06(水) 01 15 31 ID rdERworw0 865 デレじゃないのが多くね? コメント 名前
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2424.html
183 名前:依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE[sage] 投稿日:2011/10/27(木) 00 08 28 ID /Z6GsdR2 [2/5] 良くも悪くも家の食卓は賑わうようになった。 そう思う…。 未夢とキサラギの放つ殺伐とした空気の中、食事は淡々と進んだ。 「はい!」 不意にキサラギが挙手する。嫌な予感しかしないが無視する訳にもいかんだろう。 「何だ、言ってみろ」 「はい!ウチ、これからはリューヤ先輩のペットですから、好きな時に先輩の服着たり、匂い嗅いだりしてもいいんですよね?」 「変態」 「あうっ」 涙目のキサラギ。ショックを受けるうちは更生の余地はあるのかもしれない。 一方の未夢は燃えるような目でキサラギを睨み付けている。 こいつらの修羅場は既に確定事項だ。何らかの手を早急に打たねばならない。 「未夢…」 未夢の頭を撫でる。 「あっ…」 驚いている。 そして次第に表情が溶けていく。 こいつのアホ差加減は危険だ。 しっかり手綱を握っておかないと、キサラギにやっつけられてしまう。 こんなヤツでも預かってるからな、怪我はさせられん。 「先輩…なんで?」 「変態」 とりあえずキサラギにはこれで充分だ。 未夢の顔に余裕が戻って来る。 しかし…悪そうな顔で笑うようになった。 以前の天然ロリータフェイスが懐かしい。 「キサラギ、お前は何もしないうちからご褒美を要求するのか?」 俺も悪どくなった。いくら変態の手綱を握るためとはいえ、こんな思ってもないことを。 「ご褒美、ですか…?」 ゴクリと息を飲むキサラギ。 「ああ…」 「そ、それはどうしたら…貰えるんですか…」 「俺の家ではな…約束が多いヤツほどエラいんだ」 「約束…?」 未夢が、コホンと咳払いする。 「よし、未夢、言ってみろ」 真剣な面もちで頷く未夢。もう馬鹿の固まりにしか見えない。 「未夢とリューヤのお約束!」 「一つ!リューヤのパンツは履かない!」 「はうっ!」 キサラギ…何故驚く。 「一つ! リューヤの家では、オ、オナニー禁止っ!」 流石の未夢もオナニーと叫ぶのは抵抗があるようだ。少し噛んだ。 「ああっ…」 絶望するキサラギ。こいつはやっぱり変態だ。 「一つ!リューヤの家では…へっ、変態禁止っ!うわーん!」 未夢…泣くほど変態禁止は辛かったのか。 ……いい気味だ。 「……」 そして呆然とするキサラギ。最早言葉もないようだ。 「そ、そんなぁ…ウチ…何にもできないじゃないですかぁ…」 知るか! 何考えてたんだ! 184 名前:依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE[sage] 投稿日:2011/10/27(木) 00 10 18 ID /Z6GsdR2 [3/5] …そして俺はキサラギに提案する。 「お前も、俺との間に誓いを結ぶか?」 「誓い…ですか?」 キサラギはあまり、ピンと来ないようだ。まあ、無理もない。 そこで言ってやる。変態にとって魅力的な条件を。 「…頭ナデナデが付いてくる」 「!」 キサラギは一瞬目を見開いたが、不満げに視線を逸らした。 「そ、それだけですか?」 揺れてる。揺れてる。 「まさかな…前抱っこでの背中ぽんぽんが付いてくる」 「ま、前抱っこ!…有り得ない!」 駄目を押してやる。 「ちなみに未夢は、第三段階のお腹すりすりまではゲットしている」 「なっ!?」 目を潤ませ、未夢を睨むキサラギ。 「ウチ…何でもしますから!」 ブラボー。 これで、キサラギにとりあえずの鎖をつけることが出来た。 しかし…涙目になるほどいい条件か? 「それで先輩、ウチの呼び方なんですけど、ウチの名前はキサラギ―――」 「お前はキサラギだ。それ以上でも以下でもない」 遮って言う。 キサラギは、キサラギだ。俺の後輩だ。 こいつは変態だが、それでもやっぱり人間だ。 俺のためにも、いつかは更生させてやる。 「そ、それで、何約束…したらいいんですかぁ…?」 掠れた声を出すキサラギ。その目が情欲に曇っている。少し煽り過ぎた。 「未夢に対する暴力禁止」 悪いがマジ約束してもらう。 「……」 おー、おー、目つきが変わったな。それが本性か。 「リューヤ先輩の言う事でも、いや、リューヤ先輩だからこそ、それを聞くわけにいかない」 来た。マジ答え。口調もはっきりしてる。だから俺は嫌だったんだ。 「リューヤぁ…お風呂ぉ…」 未夢の馬鹿がこの状況下で爆弾を投下する。 「……」 おー、キサラギすげぇ、ナイフみたいな目だ。 俺はキサラギのことをほとんど知らない。ただの変態ならいいが、キサラギはそうでない。 危険な変態だ。 俺は未夢で変態慣れしている。 その直感が、告げるのだ。この変態は危険であると。 「飲めないならいい。お前は、この場でリリースする」 本当はそれが一番いい。危険な変態を野に放つことになるがそれはそれだ。身近な変態は一人で充分だ。 「そ、そんなぁ…ウチ…ウチ…せっかく…」 しどろもどろになるキサラギ。どんだけ未夢を害したいんだ。 185 名前:依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE[sage] 投稿日:2011/10/27(木) 00 10 56 ID /Z6GsdR2 [4/5] 「時間切れだ。キサラギ、帰れ」 「うあっ…」 キサラギの目に、じわっと涙が浮かぶ。 危険な変態に考える暇などやらない。ここまでのやり取りでこいつの危険性はある程度掴んだ。後はもうそれを離さん。 いや、離れていくのが一番いい! 「わかった!わかりましたからぁ…!」 「よし!では帰れ!」 「なっ!なんでですかぁ!ウチ、約束できます!」 「馬鹿っ、もう夜だ。そういう意味だ」 「ああ…」 安堵したのか胸をなで下ろすキサラギ。 「ウチは大丈夫です。もう先輩のペットですから」 帰らんという事か。どんだけ俺に飼われたいんだ。 この変態のせいで、今日は学校にも行けなかったというのに。 「それに、ウチ一人暮らしですし」 「……」 だが意表を突かれたな。こいつを知るのも今後の課題という事か。
https://w.atwiki.jp/notsearch/pages/253.html
ヤンデレ gif 検索すると誰か個人が作ったヤンデレの自動で動く画像が出てくる。ヤンデレが苦手な人は検索注意、そうでなくても 初見でビビる人多数。多少耐性があってもキツイでしょう。 ジャンル 画像・動画 マイクラ系 総合評価 レベル3 コメント所 こえええええええええええええええええええwwwwwwwwww -- rottar (2012-01-24 20 58 03) 名前 コメント タグ ヤンデレ 可愛いじゃない
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2430.html
271 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/11/01(火) 00 32 01 ID n30qBM32 キサラギは動かなかった。 静寂の中、秒針の音がやけに響く。 未夢は、この張り詰めた空気の中、ただ一人どこまでも自然だった。 俺には、それがとても歪なものに映る。 キサラギが、スッと腰を落とした。 まだ、椅子に腰掛け、立ち上がってはいない。 ただの予備動作。何らかの事前運動。 だがそれだけで、空気が変わる。 武道を嗜まない俺には、よく分からない。ただ、違うとしか。 キサラギは変わった。身に纏うものが。 『これ』は、俺の手に負えない。 身体をずらし、僅かに未夢に近寄る。 いざというときは、この身体を盾に―― 「だいじょうぶだよ、リューヤ」 未夢に特別変わった様子はない。言った。 「だって、未夢の方が強いもん」 未夢が、キサラギより強い……? 体格も体力も技術も頭脳も経験も全てキサラギが上だ。 いいたくないが、この中で一番無力なのは…未夢だ。 めき… テーブルの上で、キサラギの拳が鳴る。 「未夢、リューヤしか持ってないもん。負けるわけない」 めき… 未夢は、テーブルの上のそれを指した。 「それはいらないものだよ。それを使ったら、最後。…未夢にはなれないよ」 未夢になれない? キサラギが? キサラギが未夢になれない? その超理論は俺には理解できない。 だが―― 「っ…!」 キサラギは肩を抱きしめて、眦に涙を浮かべ、滑稽なくらい動揺している。 「リューヤ先輩はウチのだっ!」 その叫びに、未夢は首を振る。 「遅いよ。三年くらい」 こいつ…誰だ? これが、未夢? あくまで冷ややかに、キサラギを追い詰めていくこの女の子が、未夢? みしっ…! キサラギが――動いた! 俺は素早く未夢を抱き寄せ、庇うようにキサラギに背を向ける。 「ああうっ!」 キサラギは火傷したかのように出しかけた手を慌てて引っ込めた。 俺の胸の中で、未夢が嘲笑った。 「ほら、やっぱり未夢のだ」 「違う違う!ウチは、ウチは、ただ…リューヤ先輩が…」 髪を振り乱し、叫ぶキサラギの声は、徐々に尻すぼみになり、消えて行った。 ……理解できない。 豹変した未夢もそうだが、あれだけ殺気立っていたキサラギが…… 今は力なくへたり込み、ただ泣き崩れている……。 ……圧倒。その表現が一番しっくり来る。 未夢の持つ何かがキサラギを圧倒し、屈服させたのだ。 272 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/11/01(火) 00 33 34 ID n30qBM32 キサラギは、結構すごいやつだ。 小さい頃から空手をやって、いくつかの大会で結果を出している。 俺の通う高校は進学校だ。それなりにレベルも高い。キサラギもそれなりに頭はいいだろう。 そのキサラギが、アホの未夢に圧倒されて泣きが入るこの状況。 理解不能だ……。 最前から、俺を自分のものだと言い張る未夢。これも分からない。 ただ、キサラギが取り乱したこの状況。 力付くになれば、未夢は圧倒的に不利だ。故に、俺は未夢の側に立つ。 一方、未夢は澄ました表情だ。 椅子の上で、つまらなそうに足をプラプラさせている。 …生意気な。 「…そりゃ!」 未夢の頬をひねり上げる。 「ひ、ひたいっ! ひたいよ、リューヤ!」 「やかましい。未夢の癖に生意気な」 さらに逆の頬をひねり上げる。 「ぷぎゃっ!」 「上上下下左右左右…」 「ぷぎゃァァァ!」 俺のジャイアニズムが未夢をひとしきり蹂躙する。 「ウチ…」 キサラギが、ボソッと呟く。 「ウチだって、リューヤ先輩だけで…」 「あ?」 振り返ると、キサラギが立ち上がって、こちらを見ている。 涙に濡れた頬には、後れ毛がへばり付き、その表情はかなり痛々しい。 「…わかりました。ウチ、先輩を困らせません。学校行って来ます」 ニコッと笑うキサラギ。 何だろう…不吉な笑顔だ。 達観。 あるいは諦観。 そんなものが漂う笑み。 「お、おう、わかってくれたか」 言いながら、俺の胸によぎる一抹の不安。 待て。 俺は…いつか、こんな笑顔を、どこかで… 「行って来ます」 キサラギが出て行く。 既視感。 寂しそうな背中。 袖を引かれ、振り返ると未夢の笑顔。 「リューヤぁ、病院…」 「おう、そうだった」 馬鹿な俺は思い出せずにいる。 キサラギが見せた笑顔の意味を。 答えは、目の前にあるものを。 273 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/11/01(火) 00 35 32 ID n30qBM32 未夢と病院に向かう。 保険証を準備し、着替えの指示までする俺は、まんま未夢の保護者だ。 未夢の方は体調の不具合が機嫌にも反映しているようだ。 むっつりとして、ポケットに手を突っ込んでいる。 電車の窓から流れる風景を見る。 窓ガラスに映った未夢が、じっと俺を見つめている。 その頬が、ほんのりと桜色に染まっていく。 「…?」 なんだろう。未夢は言いたいことがあるのか、じっと俺を見つめている。 「お膝、座りたい……」 「ダメ」 言ってまた車窓に視線を戻す。 「未夢ね…一人だけなら、許すよ」 「?」 わけわからん。一人ってなんだ。膝と前後の繋がりがチンプンカンプンだ。 「なんだそれ…。許さんかったら、どうなるんだ?」 「…悪い子になっちゃうかも…」 未夢はにこにこと笑う。いつもの笑顔。 …ゾクッと来た。 最近、未夢にビビらされることが多い。 「未夢…いっぱい、いっぱい考えたんだよ」 「ん?ああ…」 「リューヤは、ワガママさん嫌いで、でも、未夢はいっぱい、いっぱいワガママさんで…」 未夢は足りない頭で、必死に言葉を探しているようだ。 その口調はたどたどしい。 「いっぱい、いっぱいリューヤは、未夢によくしてくれて、でも、未夢は足りなくて……」 「……」 未夢は、何かを伝えようとしている。こういう時、俺は口を挟まないようにして、なるべく未夢に話させることにしている。怒らず、辛抱強く。大切なことだ。 「未夢が、もうちょっと我慢すれば、きっとリューヤは、いろいろなことができて……」 「がんばれ」 未夢の頭をかき回す。 「未夢…悪い子なの。あの子もすごく悪い子で…」 あの子?キサラギのことだろうか。 「…ほんとは、仲良くしたくない。でもリューヤが…」 俺が、なんだ…? 未夢が俯きがちだった顔を上げた。 「だから、一人だけ我慢するの。未夢、きっと悪いこといっぱいするけど、リューヤがそうしてほしいなら…」 よくわからん。 つまり、こういうことか? 未夢は、キサラギのペット化を認めるということか? 俺は、それを感謝しないといけないのか? ほんとにわからん。 未夢も、キサラギも、あの『飼う』を本気で捉え―― ヤバい…。俺、また適当なこと言ったかも。 だとしたら、キサラギ……悪い予感しかしない。 274 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/11/01(火) 00 37 56 ID n30qBM32 総合病院の婦人科では滅茶苦茶キツい思いをさせられた。 学生服でロリ体型の未夢を伴い受け付けを済ませる俺。 イタい。 激しくイタい。 診察を受ける未夢を待つ間、針のむしろのイタさは最高潮に達した。 診察の順番を待つ、若い夫婦たちの視線が厳しい。人間のクズを見るような冷たい目。 「…あんな小さい子に…」 「男の風上にも置けんヤツだ」 くそお! 未夢めえ!! そして帰って来た未夢は何故かご満悦の様子だった。 「リューヤぁ、スッゴいの――」 「わあ!!言うなあ!」 その後、腹が減ったとゴネる未夢と繁華街で食事する。 登校したのは、結局昼過ぎてからだったが休むよりはいい。 担任は俺の特殊な事情を理解してくれている。…もちろん、その説明は未夢の両親にさせた。俺は無制限にお人好しではない。 もう少しで放課後なので、未夢は校門で待つ。 校門は人だかりでいっぱいだった。救急車やパトカーが詰め掛け、大きな騒ぎになっている。 いやな予感に歩を進めると、 「リューヤ!リューヤっ!」 校舎を見上げると、友人の何人かが隣の校舎を指差して、叫んでいる。 視線を向ける。 隣の校舎。 屋上のフェンスを乗り越え、壁際に立つ人影は、 「キサラギ…?」 キサラギの両手首は何本もの赤い筋が入り、白いブラウスは血であろう赤い液体に染まっていた。 フェンスを乗り越えた壁際で、ナイフを片手に、近寄ろうとする連中を牽制している。 いかれてる…。 素直な感想がそれだ。 「がんばるね、あの子…」 気が付くと、未夢が隣に立って、俺と同じように、屋上のキサラギを見上げていた。 「キミ!キミがリューヤ君かっ!」 慌ててやって来た警官が、携帯電話を押し付けてくる。 「説得してくれ!彼女は興奮して、誰の言う事も聞かんのだ!」 「なんで、俺に…」 その俺の問いかけに、警官は不吉なものでも見るように、一瞬キサラギに視線を飛ばした後、眉根を寄せた。 「キミの名前ばかりを叫んでるよ…もう、一時間にもなる…」 「一時間も?…死ぬ気なんですか?」 警官は首を振った。 「それが、わからん。本人はそのつもりはないようなんだが、飛び降りるつもりではいるらしい」 なんだそれ…。 困惑しながら、携帯電話を受け取る。 『あっ、先輩ですかぁ。ウチですぅ、キサラギですぅ』 こんな事態を引き起こしておいて、キサラギは 275 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/11/01(火) 00 40 50 ID n30qBM32 いつものように、声にしなを作って喋り出す。 『あのぉ、ウチぃ、これから見せるんでぇ、よぉく見といて下さいぃ』 「見せる?……何を?」 『ウチの気持ちですぅ』 キサラギの俺に対する好意と、飛び降りになんの関係があるのだろうか…。 「おまえ、バカか?」 なるべく冷たく言う。 『え…?』 「誰がそんなことしろって言ったんだ?」 『え?で、でも、リスカ女の時は…』 「あん?」 怒ったように言う。……本当は、滅茶苦茶びびってる。 「おまえ、未夢に張り合ってそんなことやってんのか!!」 『……ぐすっ…』 大きく鼻を啜る音。 『だって…リューヤ先輩…ウチのこと、見てくれないじゃないですかぁ…』 「そんなことせんでも、ちゃんと見てる」 沈黙。 『…ウソだ。ウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだぁ!リューヤ先輩、ウチを見てくれない!命張らないと、ウチを見てくれない!』 「そんなことない」 くそ…手に負えん…これは…飛ぶ… 落下予想地点には、もちろんマットを設置してある。だが、そんなもの、キサラギの意志一つでどうにでもなる。 もし…いや、もう飛ぶと覚悟して…どうする? どうやって、キサラギを助ける!? 『先輩、見てて下さい。ウチも先輩だけなんです。ウチ、先輩に命差し出せますから!』 その時、未夢が言った。 「長いね。早く、飛ばないかなあ…」 まるで、遊園地のアトラクションを楽しみにしている子供のようだった。 キサラギが笑う。 これ以上ないくらい晴れやかな笑顔で。 そして、キサラギは、飛んだ。 276 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/11/01(火) 00 44 16 ID n30qBM32 キサラギが、空を、飛んだ。 ――狂ってる。 躊躇いなく空に身を踊らせたキサラギは、笑顔だった。 …マジか。 できるのか、それが。 キサラギの思いの質と量を、大幅にはかり違えた。 目の前が白くなる。 音が消え、時間の概念が希薄になるのが分かる。 今、この瞬間、集中力が極限にまで上がってるのがはっきりわかる。 キサラギが、ゆっくりと落ちてくる。 このバカ…笑ってやがる。 だが、どうするんだ俺?キサラギを助けるのか? …なんか、やだなぁ。 助けるんだったら、あれか? 漫画で見た、あれか? すげー痛そうだったぜ、あれ。 畜生…別のヤツがやれよ。 …みんな、固まってやんの。 足が動く。…やっぱりか。俺がどうにかしろってことか。 ヤになっちゃった。 けど――行くぜ、俺。 地を駆ける。未夢は、少し驚いて、それから笑った気がした。 「あと一人だけ、我慢するよ」 あの言葉は、この瞬間を予期してのことか。 しかし、未夢。 コイツには問題がある。 キサラギをガラクタくらいにしか思ってない。 …少し話す必要があるな。 そんなことより、キサラギが近くなってきた。 でも、さっきからおかしいぜ。 俺、こんなにスゴいヤツだったか? これって、ひょっとしたら……まだ、チェリーなのに… ひでえよ、神様。 空中でキサラギを受け止める。 ――重っ、キサラギ重! 両腕が、プチプチってヤな音がした。 構わず滑るようにして、受け身を取る。 漫画じゃ、これで上手く行ってた。 上手く、行ってた。 全身を叩かれたような衝撃が走った。 現実は漫画ほど甘くなく、受け身は完全に失敗した。 50点。 得点にしたらそれくらいだろうか。 俺の身体がクッションになった。キサラギは無事な筈。 ヤバい。 あんまり痛くない。 これって… まあ、いいか。上出来だろ。 俺って、今イケメンだよな! 今が、人生の最盛期。 ……あんまり嬉しくない…… キョトンとしたキサラギと目が合った。 キサラギは周囲を茫然と見回し、大の字に倒れた俺を視線に捉えたところで動きを止めた。 キサラギの顔が、見る見るうちに青くなる。 「あ、あああああああああああああああああああああ!」 本当にコイツはうるさい。 「違う違う!ウチが先輩を壊すわけない!ウチが先輩を壊すわけない!」 277 :依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE:2011/11/01(火) 00 45 09 ID n30qBM32 未夢に抱き起こされる。 「……」 未夢は、コイツこそ取り乱すだろうと思ったが、様子が変だ。とても静かで、落ち着いた表情をしている。 それはなんだか、心地よくて… 少し、眠くなってきた。 「リューヤ、死ぬの?」 返事のかわりに、俺はチョコレートみたいな血を吐き出した。 「すぐ、逝くね」 ああ…そういうことか。 馬鹿な俺にもようやくわかった。 コイツは…未夢には俺しかない。 勉強もスポーツも駄目。体型にも恵まれない。何の特技もない。 未夢のどこを切っても、俺しか出てこない。 未夢の小さい身体には、俺に対する気持ちしか詰まってない。 それでか…キサラギが勝てないわけだ。 「未夢には、リューヤしかすることないもん」 何度も言ってたのになぁ…。 未夢にキスされる。 小さな舌が、これでもかと言わんばかりに俺の口腔を蹂躙する。 俺もまた、それに応える。 離れる。 血の雫が二人の間に伝う。 血の鎖で結ばれた二人。 それがなんだか心地よい。 なんだか、よく眠れそうだ… 「おやすみなさい、リューヤ」 未夢の頬に伝う、一筋の銀の雫。 なんだ…コイツ、やっぱりツラいのか。 びっくりしたぞ。落ち着いてたから。 俺は、そっと未夢の耳元に口を寄せる。 「起きたら…………やらせろよな……」 だから今は…… おやすみ…。
https://w.atwiki.jp/mustnotsearch/pages/492.html
登録タグ GIF グロ ビックリ ホラー 危険度3 画像検索にて、女の子がドアからこちらを覗いてるGIF。 元ネタはゲーム『ToHeart2』。 途中で黒い画面に目と口のみがある画像が出てくるので注意。 ちなみに、この画像はかわいくさせての顔面パーツとしても使われている。 アーカイブはこちら。 ttps //archive.is/rLSXJ 分類:ビックリ、ホラー 、グロ 危険度:3 コメント りゅうおうたん保管庫 というサイトにこのGIF置いてたよ -- 名無しさん (2011-01-03 17 18 35) 一応絶叫がないのが救い?ってか前回も書いたようなきが、、、?消されました? -- SEA (2011-01-03 18 01 23) ToHeart2のこのみです -- 名無しさん (2011-02-24 20 39 31) この顔は・・・かわいくしてのやつか? -- 名無しさん (2011-03-07 09 07 06) ストーリーがまったくよめませんでした。でも、すごくびっくりしました! -- ギーグ (2011-05-12 18 08 55) これを見て心を痛めた人はToHeart2のこのみルートやって心を癒しましょう -- ヘタレ野菜王子 (2011-05-17 21 34 06) 絶対これは一番最初に出てきたジョセフィーヌの -- 名無しさん (2011-06-11 15 25 57) ↑人ですね -- 名無しさん (2011-06-11 15 27 05) 途中びびったww -- 名無しさん (2011-06-12 10 22 03) この人が作るのってだいたいグロばっかりw -- せびれう (2011-07-31 01 43 45) ヤンデレと打つだけでも出て来るんだがwww -- 平沢唯は俺の嫁 (2011-08-19 14 29 52) ドアから覗いてる画像は編集なしでも怖いよ・・・ -- 名無名無 (2011-09-30 19 00 27) ツンデレ GIFなら大歓迎です(ニッコリ -- 雑草 (2011-10-05 19 57 48) ↑ツンデレ GIF だと蓮コラでますよ・・・ -- ななしん (2011-12-10 11 02 04) このみ可愛いよこのみ、ヤンデレ大好きだから良かった -- 暇人 (2011-12-28 07 56 45) ↑2 因みに蓮コラだけじゃなくて、口にワイアーみたいなものを入れて口から血を出しているカップルとかの画像もありました(;ω;`) -- 風凛 (2011-12-31 17 09 55) ヤンデレってなんですか -- 名無しさん (2012-01-15 17 44 43) GIFってなんですか -- 名無しさん (2012-01-15 17 45 19) ↑x2私の為に死んで!の人のこと↑簡単に言うならばフラッシュみたいなモンですヨ。 -- SEA (2012-01-15 18 43 29) このみはこんな子じゃ・・・まあ大好物だけど。 -- 桜 (2012-01-16 02 01 17) ↑↑一応言っておきますがヤンデレってのは誰かを好きになり過ぎて病んじゃった人の事を指します。 -- 名無しさん (2012-02-17 14 48 25) おやすみ、ユッキー -- 名無しさん (2012-03-04 16 01 27) 歯もでてこなかったっけ? -- 名無しさん (2012-04-11 16 03 30) これ -- 猫村 (2012-04-11 20 22 28) ↑ミス これビビッたなあ・・・ -- 猫村 (2012-04-11 20 23 06) ↑×5に補足。 スクイズとか未来日記なんかは、けっこうヤンデレ的なところが多いので、ぜひ見たほうがいいかもしれません。 -- ホワイト (2012-04-13 00 49 04) タカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタカくんタ -- このみ (2012-04-19 17 00 14) 最近はヤンデレをよく見かけるようになったな一種の流行かなにかか? -- 赤目男 (2012-04-19 18 19 28) 見飽きねえw中毒になったwww -- 名無しさん (2012-04-19 18 53 33) ↑×2 そうですね…。しかしなぜヤンデレは人気になったのでしょうか? -- ホワイト (2012-04-19 23 19 35) ユッキー… -- うれしくて (2012-05-18 15 40 30) 私これゲーム感覚で見れました。 -- 名無しさん (2012-06-08 17 22 37) YouTubeでも発見できた。 -- 名無しさん (2012-12-08 09 48 12) 原作にこんなイベントあったっけ? -- まー。 (2013-03-06 07 20 12) ↑多分無いな -- タエちゃん (2013-03-08 00 12 02) ↑そうですか。ども -- まー。 (2013-03-08 03 26 54) これって,まどかちゃん? -- 名無しさん (2013-03-10 11 47 33) ↑トゥハート2言うゲームのヒロインです -- 名無しさん (2013-03-24 12 31 23) よしっっ!来たぜ!一番好きなジャンル!!←ヤンデレ -- 有魔 (2013-04-09 19 02 59) 見たことあるけど怖かったワロタ。 -- スイマヤー (2013-05-09 19 00 24) ツンデレの方の蓮コラは確認(一番下) -- はまなす (2013-05-09 21 00 06) ヤバイ -- 名無しさん (2013-06-13 23 48 09) ヤンデレよりツンデレ -- タツヤ (2013-06-28 20 32 47) ヤンデレ好きなんだがこわくてみれないw -- 名無しさん (2013-08-04 11 38 51) 病んでる?やんでる?ヤンデル?ヤンデレ!!ウッヒョオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!Σ=(卍^o^)卍 -- 名無しさん (2013-08-04 12 01 42) ヤンデレかわいすぎだよ! -- 君と仲良くしたいなっ☆ (2013-08-30 21 15 10) (卍^o^)卍 (卍^o^)卍 (卍^o^)卍 -- チルノ⑨ (2013-09-24 21 47 12) スクイズのあの人の画像が出てきて少しビビった。 -- 名無しさん (2013-10-27 17 15 19) えっと、gifアニメについて説明が必要だなこりゃ。 -- 名無しさん (2013-10-27 17 18 25) ヤンデレ好き。大好き。うん大好き。愛してる -- KK (2013-10-28 19 38 50) 見方によるとかわいいですよ -- 魂 (2013-12-15 00 13 03) かわいくさせての顔が出てきました…。 -- ウルトラさん (2014-02-09 12 59 00) ヤンデレって、 -- ウルトラさん (2014-03-06 18 53 21) cdのやつかと思っていました。 -- ウルトラさん (2014-03-06 18 57 54) なんてゆーかタカくんってだれ?なぜそーーーーなったんだ?xxxってどなただろ?多分最後のほーで女の子が左手に持ってた首だと思うけど・・・謎が残る・・・誰か教えてください。すみません。 -- ふぁんしーあいらんど管理人 (2014-03-17 20 57 38) 黒い画面に目と口って星のカービィの洞窟冒険のボスみたいな感じ? -- 名無しさん (2014-05-25 23 39 47) なんだ………これか -- フォオクトの検 (2014-06-13 23 21 01) 友人に本気でビビられたんだが -- 名無しさん (2014-06-30 22 03 04) 気持ち悪い!! -- zz- (2014-07-12 18 25 29) ↑2私の友人も本気でビビったwwww少しかわいくさせてに似てる…ほんの少しビビったwでも面白い! -- 綾架 (2014-08-07 17 46 40) 何か放射線の影響で尻に何かできている画像があった -- りんごあめ (2014-08-10 17 26 13) ビックリよりもはやホラーかマイクラだ! -- ユッキー改めアズマッキー (2014-09-28 21 58 20) 正直これかなり苦手 -- 名無しさん (2015-04-06 22 50 57) さっき検索して出ませんでした(T -- エリガル (2016-05-21 16 20 49) りゅうおうたんとか懐かしいなー -- 名無しさん (2017-03-21 23 41 30) 悪いけど一人でゲームするならToHeart -- ビリー (2018-06-22 14 17 17) これ危険度2だけど侮れない、途中の目と口だけのシーントラウマになった -- 名無しさん (2019-03-03 17 12 26) けものふれんず.exeのアイツ? -- chokn118 (2019-11-02 20 56 43) ヤンデレとか、俺得。 -- 弥生 (2020-05-20 20 15 58) グロのカテゴリーもつけたほうがいいんちゃう 俺こーゆー二次元のグロ苦手・・・ -- 名無しさん (2020-10-18 14 06 56) 窓からこちらを見ている茶髪の女の子は「柚原このみ」である。「タカくん」は、元ネタトゥーハート2の主人公のこと。後半に出てくる赤髪の女の子(XXX)は「向坂環」である。このみが、昔からタカくんの事が好きだったのは事実だ。しかしながら、何が理由でこのように心が荒んでしまったのか。この恐怖映像の背景には何があったのか。勿論作者にしか知り得ない所である。謎が残る。あと柚原このみはそれでも可愛い。 -- 名無しさん (2020-12-15 21 59 57) ヤンデレ怖い... -- ゲーム太郎 (2022-01-10 17 55 16) GAME OVER(無慈悲) -- さの (2022-01-22 07 32 12) ヤンデレが怖いな -- 名無しさん (2023-03-28 10 19 18) こっわ -- タピオカパン (2023-05-18 19 16 43) 名前 コメント 耐性自慢(「こんなのヨユーw」「俺小6だけど見れたw」など)のコメントはご遠慮下さい (過去そういったことが相次ぎコメント欄停止にまで至ったことがあります)
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2420.html
132 名前:依存型ヤンデレの恐怖[sage] 投稿日:2011/10/22(土) 11 38 09 ID u8FGsT46 [2/5] 依存型ヤンデレの恐怖3 いつものように未夢にエサを与える。 「よし、食え」 「はーい!」 今日は日曜日だ。従って、朝メシはいつものように手抜きしない。きちんと米を炊いて、和風の朝食を採る。 「うまいか?」 「おいひーよ?」 「そうか…」 未夢は口一杯にご飯を頬張って、朝メシをやっつけるのに必死だ。 いつもアホな行為に隠れがちだが、未夢の抱えている問題は大きい。 先ず、未夢は仕事に就くことができない。俺と一緒に居るか、何か俺を連想させる場所や物がない場合、平静でいられない。具体的には、多動性が出る。小学生の低学年クラスに一人はいる落ち着きのないアレだ。 そんな奴が仕事などできるわけがない。 通常、幼少期の多動性は年齢を重ねると落ち着き、矯正されるものだが、こいつの場合、それがうまく行かなかったのだ。 とにかく、こいつは一人にしておくとロクなことをしない。 見た目通り、子供を放し飼いにするようなものだ。 しかも、どうしようもないタイプの。 俺にとっての一番大きい問題は、そのことを未夢本人は勿論、家族も十分理解し、その上で俺に丸投げしているということだ。 (まあ、いずれ独り立ちさせるが…) 「なあ、未夢。寺に行かないか?」 「リューヤがイクなら…」 なんだ?何かがおかしかったな…。 「なにするの?」 「ズバリ、精神修養だ」 「セイシ…?やだぁ…リューヤったらぁ…」 駄目だ。こいつの頭では理解できない。既に曲解を始めている。そもそも、俺も坊主に知り合いはいない。 「デート、デート♪リューヤとデート♪」 未夢は俺とずっと、一緒に居られる週末は基本的には機嫌がいい。 くそ、こいつは人の気も知らないで。 「未夢…おまえ、俺のことナメてるだろ」 未夢は、ぱぁっと笑みを浮かべる。 「ナメる…しゃぶる、じゃ駄目かな…?」 最近の未夢は何かを掴みつつある。 俺を困らせる、という一点において何かの技術を獲得しつつある。 もうヤだ…こいつ。 俺が頭を抱えるのと同時に家電が鳴った。 「未夢…出てくれ」 「はーい!」 ニコニコと笑顔で電話のフックを上げる未夢。 次の瞬間、その笑顔が鬼のような修羅の形相に変わった。 「う…!」 思わず呻く。部屋の温度が2、3度下がったような冷気漂う緊張感。 「…いないよ」 押し出すように低く言って、そっとフックを掛ける。 これも未夢。 170 名前:依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE[sage] 投稿日:2011/10/24(月) 15 12 28 ID SiDsRrmg [2/3] いつ頃からだろう。未夢がこんな憎悪に満ちた表情を見せるようになったのは。 進路が別々になった時とリストカットした時期は、ほぼ同時期だ。俺も余計なことをしたものだ。おそらく、未夢は変わらざるを得なかったのだ。 俺との関係を継続して行く上で、今の変化は未夢にとって必要なものだったのだ。 「誰からだ?」 知っているが、敢えて聞いてみる。 「しらない」 硬質な声。 いつものように無意味な元気も無ければ、笑顔もない。 俺が何気なく放った無責任な一言が、こいつの内包する何かを変えたのだ。だとすれば、未夢の無邪気な笑顔を奪った俺の罪は如何ばかりか。代価として何を支払えばいいのだろう。 不吉な予感がする。 また、電話が鳴る。 「でるね」 そしてまた、未夢が電話を切る。 その繰り返し。 未夢は馬鹿だから、この繰り返しを苦痛とは捉えない。キリがないとも捉えない。 「俺が出る」 乾いた声。 くそ…俺が未夢にビビるなんて……あり得ん! 退かぬ! 媚びぬ! 顧みぬ! 違うな…こんな馬鹿な自分が、結構好きだ。 ほう、と息を吐いて、未夢の頭を撫でてみる。 何も起こりはしないのだ、と。 「わ……」 未夢は、目を丸くしてこっちを見る。 こうしたのは、いつ以来だ? わからん。 未夢を褒める俺の姿が想像できん。 …まあいい。電話に出る。 「オラ!このリスカ女!リューヤ先輩出せよ!てめえの汚い肉穴で―――」 「ぐおっ!」 キーンと来た。 この殺伐とした男口調。やはりヤツだ。 「あっ!リューヤ先輩?ウチです!キサラギです!」 うるさい。耳が爆裂したかと思った。 「聞こえてるよ。もっと静かに喋ってくれ」 このキサラギという女のことをただ一言で表現するなら、 「うるさい。お前は本当に、うるさい」「すんません……でも!あのリスカ女がいけないんですよ!」 キサラギは俺の一つ年下の高一だ。去年まだ中学生だったキサラギを助けてから、週末たまに電話をかけてくるようになった。 「リスカ女?未夢のことか?その呼び方止めろって、何回言わせるんだ。後、汚い言葉遣いも。何遍も言わせんな」 「……すんません……」 うわ…めっちゃ気のない反省。 「で、なんか用か?」 「あっ!よ、よかったら、ウチと映画でも――」 「行かない」 「……」 キサラギは静かになった。何時もこれならいいのに。 「じゃあな」 171 名前:依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE[sage] 投稿日:2011/10/24(月) 15 13 53 ID SiDsRrmg [3/3] 俺は未夢の世話で忙しい。キサラギの相手をする暇など微塵もない。 悪く思うなよ… 心の中で拝みつつ、そっとフックを掛ける。 不意にゾクッと背筋に悪寒が走った。 未夢だ。この変態が何を考えたか、俺の指を舐めたのだ。 「んふ…リューヤぁ」 また電話が鳴る。 取ると同時に未夢の頭に拳骨を見舞う。 未夢は「ピッ」て言った。 「酷いですよ!リューヤ先輩…なんで、ウチにばっかり、そんなに冷たいんですかぁ…」 最後の方は鼻声だった。 「そんなにリスカ女が大事なんですかぁ…?」 キサラギは突然泣き出した。とても面倒なことになったことだけはわかる。 ちなみに俺は未夢を含めた皆に等しく厳しく冷たい。だから、キサラギの評価は間違っている。 どうしたもんか考えていると… 「学校辞めたら、ウチのことも飼ってくれますかぁ…?」 「はぁ?」 飼う? も?複数形? 泣きながらそんなことを口走るキサラギは、きっと変態なのだろう。 変態の相手なら慣れている。 「飼うって、何のことだ?」 「ウチのことですよ……」 「変態」 キサラギは黙っていたが、グサッという音が聞こえたような気がした。 また、俺はそっとフックを掛ける。 電話が鳴ることはもう、ないだろう。 鳴った時は、その時はもうキサラギは人ではない。超えてはならない一線を超えた変態だ。 変態を熟知する俺がそう思うのだ。間違いない。 変態、と真剣に吐き捨てた言葉はキサラギの全人格を否定する言葉だ。 故に、キサラギが本物の変態でない限り俺に電話を掛けることはあり得ない。 だが、電話は、鳴った。 それは、運命のベル。 キサラギからの電話は、いつもうるさくけたたましく聞こえるが、この時は何故か静かに控えめに聞こえた。 俺は電話の線を引き抜いておいた。 さようなら、キサラギ。また来世で会おう。 変態の知り合いは二人もいらない。キサラギが変態でないのなら、それはそれで結構なことだ。 俺は足元でうずくまるもう一人の変態に視線を向ける。 「リュ、リューヤ、ひ、光が見えたよ……」 「そうか…」 そのまま光に飲まれてしまえば良かったのに…。 俺は何か吹っ切れたような気がした。 未夢とキサラギが変態なのは、俺のせいなどではない。 二人には元々素質があった。それだけのことだったのだ。 俺がボタンを押した。それだけだ。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1857.html
680 名前:ヤンデレの娘さん 交際の巻[sage] 投稿日:2010/09/07(火) 22 49 38 ID eE7Ry3FM [2/15] ガキの頃の俺は、割と聞きわけの良い子供だったと思う。 ただし、「聞きわけの良い」というのは「全くわがままを言わない」という意味である筈も無く。 後から考えてみると驚くほどのわがままを言うこともあった。 そんな時の夢を、時々見る。 今日の夢は、3歳くらいの時のこと。 保育園へ俺を預けようとする親に、俺が駄々をこねている。 ―――いっちゃやだ!――― 幼い俺が涙と鼻水をたらしながら言うのである。 それに対して、親は何と言っているのかは分からない。 なだめているのかもしれないし、わがままを言うなと叱っているのかもしれない。 現在の俺自身はその光景を他人事のように見ている。 ―――おとうさんはぼくのことなんてきらいなんだ!――― 親に向かって、小さな俺が一方的に言葉をぶつける。 今思えば残酷なものだ。 妻を亡くした親にとって、俺はたった一人の家族なのに。 ―――おとうさんはぼくよりもおしごとのほうがすきなんだ!――― どこの奥さんだよと現在の俺、この光景を客観的に見ている俺がツッコミを入れる。 親が俺とほとんど一緒に居られないほど頑張って働いていたのは、他ならぬ俺の為だと言うのに。 ―――もっといっしょにいて!――― 小さな俺が悲痛に叫ぶ。 ―――もっとやさしくして!――― 小さな俺がわがままをぶつける。 ―――もっと愛して!――― 心から、欲しいものだから。 そこで、ふと、小さな俺の姿が歪んだ気がした。 歪んで消えて、代わりに1人の少女が立っている。 細い肢体に艶やかな黒髪。 緋月三日。 昨日からお付き合いを始めた、俺の恋人。 ―――愛してくれなきゃ、――― その緋月が両手いっぱいに凶器の束を持っていた。 ―――私を殺してあなたも死にます――― その全ての凶器を現在の俺、その光景を客観的に見ている俺に向かって振り上げて――― 681 名前:ヤンデレの娘さん 交際の巻[sage] 投稿日:2010/09/07(火) 22 50 38 ID eE7Ry3FM [3/15] 「うどわぁ!」 そして、俺は自分の情けないと共に跳ね起きた。 ごちん! 「ぐあ!」 「ぎゃう!」 二人の額が勢いよくぶつかり、思わず悶絶。 って、「二人」? 俺は額の痛みを我慢しつつ、頭突きをかましてしまった相手を見る。 「…い、痛いです…」 部屋の中で痛みに悶えている制服姿の黒髪和風少女、緋月三日。 期せずして、夢の中で俺に凶器を振り上げていた相手だった。 …まだ夢の中じゃあるまいな。 そう思って頬を引っ張ると、しかし確かな痛みがある。 それ以前に額が痛い。 つまり現実である。 …何で、昨日付き合い始めたばかりの恋人が俺の部屋に居るんですか? 「ええっと、ひづきん?」 困惑しながら、昨日ノリでつけたあだ名で呼びかける。 「…お、おひゃようございます…」 「おはよう。ってか、痛いのに無理して喋んなくて良いから…。今、氷とってくるね」 そう言って台所からビニール袋に氷をつめたものを用意して、緋月の額を冷やす。 「…朝からこんな情熱的な一撃を頂くとは思いませんでした」 「あはははは…。ゴメン」 額を冷やしながら涙目になっている緋月に謝る俺。 って、そう言う話では無く。 「そう言えばひづきん。どうしてこんなところに?」 「…光ある所に影があるように、御神くんの行くところに私がいるのです」 「…どっちが影やねん」 無駄に恰好良い台詞だった。恰好よすぎてシチュエーションに合わないどころか答えになって無いが。 「つまりはおはようのご挨拶にと」 「ああ、なるほど。鍵は親が行きがけに開けてくれたんかな?」 俺の親、御神万里(ミカミバンリ)。多忙を極めるメイクアップアーティストで、特に今は某特撮番組の役者さんの担当だとかで、撮影開始時間の関係で最近は死ぬほど朝が早いのだ。 「…はい、お母様のお陰で入れました。……ピッキングではどうにもならなかったので」 「それは犯罪だ!」 「…窓から入ろうとも思ったのですが…」 「それは危険だ!」 ってかお母様って…ああ、ウチの親のことか。 その呼び名、かなり誤解入ってるんだけどなァ… と、タイミング良く俺の携帯電話にメールが入る。 682 名前:ヤンデレの娘さん 交際の巻[sage] 投稿日:2010/09/07(火) 22 51 03 ID eE7Ry3FM [4/15] 6 05 from:親 件名:パパよぉん 本文: こんなカワイイ彼女がいたならアタシに報告しなさいヨ☆ イマドキこんなにアナタのことを想ってくれるコはいないわよぉ? カノジョ、大切になさいネ♪ どれだけ恋をバーニングさせても良いけど、避妊はキチンとなさい。相手の為にも。 あと、今夜はサバミソでヨロ!ヒロくんのドラマ見てたら食べたくなっちゃったわン。 「オッケー。サバの味噌煮ね」 了解、と返信する。 御神万里、その生物学上の性別は男である。 「…お母様、素敵な方ですよね」 「まぁなー…」 オカマのクセにパッと見分からないんだものな。 フツーに男に口説かれることもあるらしいし。 「そうだ、緋月。ご飯まだなんじゃない?」 「…だ、大丈夫です」 ぐぅ~ 緋月の腹から、言葉とは裏腹な音が聞こえる。 「遠慮するなよ、恋人なんだしー」 「……はい」 顔を真っ赤にして答える緋月。 「んじゃ、すぐ用意するから、ダイニングルームで待っててくれる?」 そう言った俺の頭からは、さっきの夢の内容などすっかり消えていた。 683 名前:ヤンデレの娘さん 交際の巻[sage] 投稿日:2010/09/07(火) 22 51 25 ID eE7Ry3FM [5/15] サクッと制服に着替えると、俺は台所に向かう。 隣のダイニングでは、緋月が朝食を今か今かと待っている。 ちなみに、俺の母は俺を産んですぐに亡くなっており、もう一人もご存じのとおりもう仕事に出かけている。 だから、この家にいるのは俺と緋月の二人だけだ。 「今日の朝食はホットケーキでございますー」 食卓にお皿を並べ、俺は言う。 「いただきます」 「…いただきます」 手を合わせ、緋月がホットケーキを小さく切り取り、控え目に口に運ぶ。 「…すごく、美味しいです…」 「よろこんでもらって何より」 緋月の言葉に偽りは無いようで、次々にホットケーキを口の中に放り込む。 こんな美味しそうに自分の作ったものを食べてもらうのも、久しぶりである。 何か緋月の目もキラキラしてるし…。 片親ゆえに必要に迫られて身に付けた料理スキルに感謝したのも久しぶりかもしれない。 自然頬がゆるむ。 「お姉様の作った物よりずっと大きくて柔らかくて…」 「緋月って、お姉さんいるんだ」 ホットケーキを美味しそうに食べる緋月に、俺は頬笑みながら言った。 言われてみれば納得である。 「三」日という名前も三日月からの連想だけでなく、三番目に生まれた子供だからかもしれない。 「はい、二日(ニカ)お姉様とおっしゃって…」 そこで、雷に打たれたような顔になる緋月。 「お姉様ごめんなさいごめんなさいもう我が侭しません言いませんですからお仕置きはやめてやめてやめて~~~~!」 「ちょ、緋月!?」 何か、トラウマスイッチが入ってしまったらしい。 その後、錯乱した緋月を落ち着かせるのには、少し時間がかかった。 …名前出すだけでトラウマを思い出すって、どれだけおっかないお姉さんなんだろう。 684 名前:ヤンデレの娘さん 交際の巻[sage] 投稿日:2010/09/07(火) 22 51 50 ID eE7Ry3FM [6/15] その後、俺達は二人連れだって学校に向かっていた。 普段は1人か、途中から葉山と登校しているので、女の子と2人でというのは中々新鮮なものがある。 ちなみに下校時も葉山と一緒。 ホモか、俺らは。 …しっかし、良く見るとウチの学校の生徒にもカップルっぽい連中は多いものである。 イチャついてたり、手つないでいたり、チューしてたり、ナイフ持って追いかけっこしてたりと色々な奴らが居る。 こっちも対抗して手くらいつないでみたりする。 「…み、御神くん、私達って周りからどう見えると思いますか?」 俺の隣を歩く緋月が、顔を赤らめ、上目遣いで見上げながら聞いた。 小柄な緋月に対して、俺の身長は無駄に高いので、緋月が話しかける時はどうしてもそんな体勢になる…と、思う。 これを計算でやっていても恐ろしいが、天然でやってるとしても恐ろしい。 つまり、その、うん、…萌え。 「んーと、同じ学校に通う仲の良い兄妹…って冗談冗談」 俺の答えに緋月が結構真面目に涙目になったので、からかうのをやめる。 「…ひどいです御神くん。もちろん、私は一日(カズヒ)お兄ちゃんのことが大好きですけど…」 「お兄ちゃんって…、いきなり萌え属性を追加するなよ…」 「?」 ブラコンて… もしかして、俺に告白したのって、その一日さんに似ていたからじゃないだろうなぁ… だとしたらちょっと悲しい。 そんなことを緋月に言うと、 「…そんなこと、無いですよ?」 そう、緋月は穏やかに言った。 「…それは、一日お兄ちゃんのことは大好きですけど、御神くんほどではありません。それに、一日お兄ちゃんと御神くんは、全然違う感じです…。堂々としていて、頭が良くて…。あ、でも、背の高いところは似てるかもしれません」 どこか柔らかい表情でそう言う緋月。 その表情には、どこか兄に対する親愛の念が感じられて… 「…ふぅん」 「嫉妬!?嫉妬ですかそうなんですね!?」 ぶっきらぼうな俺のリアクションに、緋月が過剰反応する。 「いやいやいや」 手を横に振って誤魔化す俺。 …実は、結構図星だったり。 無理矢理でも話をそらそう。 「あ、でも、お兄さんの呼び名は『お兄ちゃん』で、お姉さんには『お姉様』なのな」 俺の言葉に凍りつく緋月。 「……あの人、いえあの御方は恐れ多くて『お姉ちゃん』なんて呼べません」 ガタガタ震えながら緋月は言った。 「…呼べないのか」 一体どんな人なんだろう。 まぁ、緋月とのお付き合いを続けてれば、彼女の『お兄ちゃん』や『お姉様』とも会う機会もあるかもしれない。 ……双方とも気が合う気がしないけどな! 685 名前:ヤンデレの娘さん 交際の巻[sage] 投稿日:2010/09/07(火) 22 52 56 ID eE7Ry3FM [7/15] 「よぉ、みかみん…ってウゲェ!緋月!?」 教室に着くと、葉山正樹が居た。 「よーはやまん、朝から挨拶が御挨拶だな」 「…」 気軽に手を上げて応じる俺に、上目遣いで葉山を睨む緋月。 横に居るだけでも負の念を感じるようだ。 「こら、ひづきん」 「ひぎぃ!」 ぎゅむ、と髪を引っ張る。 「あれは葉山も悪いけどさ、少しは仲良くしようとなさいな。睨んでばかりじゃ上がる好感度も上がんないよー」 「痛い痛い痛い痛いごめんなさいごめんなさいだから髪引っ張らないでくださいぃ!」 「ハッハッハッ!良い気味だな緋月三日!」 「葉山…」 高笑いを上げる葉山をジト目で見る俺。 お前も仲良くする気無いなぁ… その時、 「お前も仲良くするのだ~!」 ガバッ!と葉山と緋月をまとめて抱きしめたのは、クラスメイトの少女だった。 髪は短髪、茶色がかった色は水泳部だからか。 細身ではあるが、適度に鍛えられていて不健康な印象は無い。 ニコニコ笑う彼女のことは、去年も俺や葉山と同じクラスだったので、割と知っている。 「ぐぉぇ!朱里!?抱きしめると言うよりラリアットみたいになって痛いんですけどぉ!?」 その少女、明石朱里(アカシアカリ)に対して、葉山がギブアップの動作を取る。 「胸当ててんだから文句言わない!」 「…いや、お前の胸って正直無いに等しいからありがたみが無…ギブギブギブ~!」 …はやまん、言ってはならんことを。 「でさ、みっきー!」 明石は緋月の方に目を向ける。(こちらはほとんど締まって無い) ってかみっきー?ああ、緋月三日→三日→みっか→みっき→みっきー、か。 どうやら、緋月と明石は随分仲が良いらしい。(「隣の席だからな」と横で葉山が言っている) 「話は聞いたよ。ってか、噂は聞いたよ。やったじゃん、大好きな御神ゲット出来て!」 俺はぽ○もんか。 「…はい、これも朱里ちゃんが大桜の噂を教えてくれたお陰です」 「それ以外にも、色々情報流したけどね~。アタシも頑張った甲斐があったよ!」 「…対価は、いずれ」 「期待してるよん!」 最後の方、微妙にワルいふいんき(変換不可)なのは気のせいか? 「ってか、噂って?」 「誰と誰がくっついたとか、そう言うのはフツーに噂になりやすいよ?アタシが事情通なのも差し引いても。アンタらが付き合いだしたことはもう全校生徒が知ってるんじゃない?」 俺の答えに対して明瞭に答える明石。 「なるほど~」 「今頃、何人の女生徒が涙をのんでるんだろうね!」 「人をジゴロみたいに言うなよ~」 俺と明石がそう言う横では、またまた負のオーラをまき散らす緋月が。 686 名前:ヤンデレの娘さん 交際の巻[sage] 投稿日:2010/09/07(火) 22 53 52 ID eE7Ry3FM [8/15] 「…全校生徒…、女生徒…、つまり全校生徒が泥棒猫…、全校生徒が敵…!これは殺すしか!」 「ンな訳あるか」 ぎゅむ! 「ひぎぃ!」 俺は再度髪を引っ張る。 「つーか、俺も信用無いよなぁ。付き合ってるってのにそう簡単によそのコにホイホイなびくような軽い男だと思われてたなんて、お兄ちゃん悲しい…」 よよよよ、と泣き真似をしてみる。 「たかだか付き合って1日で信頼関係もへったくれも無いんじゃないかな、ひそひそ」 「よりにもよって告白への返事が『いいよー』だったもんなー、ひそひそ」 「…なんで『お兄ちゃん』なんですか、ひそひそ」 「そろそろホントに泣いていい、俺?」 3人が3人、あまりにもあんまりなリアクションを取ってくれやがる。 …つーか、いわゆるヤンデレ的対応って、基本的に意中の相手への信用が無いよな。 いや、往々にして男の方が悪かったりするけど。 「マジメな話、うまくいくようにアタシの方で『イイ』噂を流しとくから大丈夫だとは思うけどね!」 不気味なくらいニッコリ笑って言う明石。 …どんな噂だ。 「…ありがとうございます、朱里ちゃん」 「いやいや~」 「…対価はいずれ」 「期待してるよん」 だから、対価って何だ。 「ま~そんな心配しないでよ、彼氏クン。親友からボッたくるほど、アタシは鬼じゃないよ。ただ、必要なモノを必要なだけ欲しいだけ!」 グッと親指を立てる明石。 …不安だ。 「なぁ、緋月。イザとなったら俺を頼りなよ」 「…ありがとうございます」 「…信用無いね、アタシ」 その時、予鈴が鳴り響く。 「んじゃ、アタシらはそろそろ自分の席に戻るね!ばいびー、正樹!」 「…………また、授業後に」 元気よく戻る明石に、超名残惜しそうな緋月。 「緋月と明石って仲良いのな」 席に戻る二人を見ながら 「あ~、俺もあんま知らんかったわ」 俺の言葉に返すのは葉山だ。 「あ、そうなの?」 「まーなー。やっぱ幼馴染でも、女子側のことは分かりづらくなるしなァ…」 「幼馴染!?」 なんだその今時ゲームでしか聞かないようなフレーズは。 「言ってなかったか?俺と朱里はガキの頃から家近くて、学校も同じなんだよ」 「ゲームとかだったら、そのままゴールインだけどなー」 「無い無い。お互い腐れ縁、付き合い長い友達くらいにしか思ってねーよ」 ひらひら手を振る葉山。 そうは言うが、普通それでも離れていくものではないのだろうか。 だから、高校になっても親しい異性の幼馴染なんてのはゲームくらいにしか居ないわけで… 親しくするにも、親しくあるにも相応の理由と努力があるわけで… 「もしかして、もしかしなくてもそう言うこと、なのかな」 もしそうなら、恋人の友達の恋愛成就を反対する理由は無いかな、と思った。 え、葉山の意志? ……それはそれ、これはこれ。 687 名前:ヤンデレの娘さん 交際の巻[sage] 投稿日:2010/09/07(火) 22 54 56 ID eE7Ry3FM [9/15] お昼の時間 「ひづきんひづきん、一緒にご飯食う~?」 俺はゆるゆると緋月の席の方に近付く。 「ラブラブだな、お前ら。いっそそのまま二人の世界に入って、俺にとばっちりが来ないようにしてくれよ?」 葉山は何を言ってるんだろう? 「お前も来るのよ?」 「当然のように怖いコト言うなよ!?」 ガタンと立ち上がりオーバーリアクションをとる葉山。 「じゃあ間を取ってアタシも仲間に入るじぇい!」 そう言うのは明石だ。 実は俺の方から提案するつもりだったのだが、その前にノッて来てくれたようだ。 「…では、私は購買でパンを」 そう言っていそいそと教室から出ようとする緋月。 その行動に、なぜかとてもとてもとてもとても(中略)とてもイラっときた。 お前は… 「………」 ぎゅむ! 「ひぎぃ!今無言で全力で髪引っ張りましたよね!もしかして結構怒ってますか怒ってますねそうなんですね!?私そんな悪い事言いましたかごめんなさいごめんなさいごめんなさい」 「お前は今すぐ『告白の巻』を読み返せ」 「メタなことを!?」 「取りあえず、お前はもう離さない」 「何と言う求婚!?って、髪の毛をどうするんですかぁ!?」 そう言う緋月の髪を、この場から離れないように無理矢理机に結びつけ、俺たちはそれぞれの机を1カ所に集める。 「もしかして、彼氏クンの方がヤンデレ度高い?」 「そりゃ、あんなのと付き合う位だからな…。俺らはアイツを見誤ってたのかもしれん」 なぜか俺達を見て失礼なことを言う明石と葉山。 「…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい私のような雌犬にはご飯なんていらないんですねそうなんですね…」 「自分のこと雌犬言うな」 そう言って、俺は緋月の前に弁当箱と飲み物を置く。 「…え?」 「…弁当、これからは俺が作るって言ったでしょ?」 「…冗談だと思ってました」 「こっちは忘れられたかと思った」 「…ありがとうございます」 そして、互いに手を合わせていただきます。 「ところで、アタシらで考えたことがあるんだけど!」 食事中にビシっと手を上げる明石。 「何の話ー?あ、緋月、そっちのスプーンはデザートに使ってくれ」 「あ、はい…」 「椅子に縛ってたせいで髪、ちょっと乱れてるな。ブラシ持ってきたから髪梳いて良い?」 「…はい」 「話を聞けー!」 ビシっとツッコミを入れる明石。 基本、俺らはボケ属性なので彼女や葉山のようなツッコミが居るとマジ助かる。 「さっき、みっきーと話してたんだけど!」 「何をー?」 緋月の髪をすきながら、相槌を打つ俺。 しっかし本当に良い髪してるな、このままずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと梳いていたいくらいだ。 「おい、みかみん。瞳からハイライト消えかかってるぞ」 「おっと危ない。それで、明石、何だって?」 「アタシら4人で、この週末、どっか出かけないかって話よ!」 くじけそうになりながらも、ずびし、と力強く宣言する明石。 688 名前:ヤンデレの娘さん 交際の巻[sage] 投稿日:2010/09/07(火) 22 56 03 ID eE7Ry3FM [10/15] それに葉山がブーイングをかます。 「何でこのカオスな面子なんだよ!」 「良いじゃない、暇でしょ、どうせ」 明石の言葉に、「まぁそうだがよ…」と引き下がる葉山。 俺の方は、特に反対する理由も無い。 「次の土曜は俺も暇だけどなー。ひづきんはどう?」 「…はい、私も大丈夫です。それにしても、何だか…」 そこで、緋月は一瞬何かを思い出すように宙に目を泳がせ… 「男女四人デ出カケルナンテ、何ダカだぶるでーとミタイデスネ」 「オヤ、言ワレテミレバソウダネ、みっきー」 緋月と明石が棒読みでしらじらしく言う。 …何この小芝居。 いやまぁ、「そういうこと」なんだろうが。 「そりゃ無ーよ!ハブとマングースが仲よくダンスする位無ーよ!」 空気を読まない男、はやまんがロクでもないツッコミを入れる。 …うわぁ、コイツ酷ぇ。 明石の表情も一瞬ひきつった。 鈍感も過ぎると罪なのな…。俺も人のこと言えないけど。 「ま、まぁ、参加する面子の内二人はお付き合いしてるんだし、ダブルデートと言えばダブルデートなんじゃない?」 「俺ぁ認めて無いけどな…」 じっとりとした目を向ける葉山。 「何でそんなイジワル言うかなー」 「俺が去年一年間、どんっっだけ緋月の視線(プレッシャー)に耐えてきたと思ってきたんだよ!これだから鈍感は…」 うわぁ…、葉山の最後の一言に、明石がスゴい目で葉山を見てる。 「…ゴシュウショウサマ」 「心が籠もってねぇ!」 「…いや、だって…」 「「「ねぇ?」」」 俺と明石、加えて緋月の台詞がハモった。 「何で!?」 葉山が抗議するが、奴の言葉を聞く者はいなかった。 689 名前:ヤンデレの娘さん 交際の巻[sage] 投稿日:2010/09/07(火) 22 56 38 ID eE7Ry3FM [11/15] その後ゆるゆると授業を受け、俺は放課後もまたゆるゆると過ごしていた。 「…御神くん、一緒にかえ…」 「御神センパイ!料理部に助っ人お願いします!」 「ん~、良いよ~、でも俺なんかで皆の助けになるかなぁ?」 「何言ってるんですか、先輩くらい料理できる人ウチの学校にそうは居ませんよぉ」 「持ち上げるねー。まー、そこまで言わせちゃったら来ないわけにもいかないかー」 「「「ありがとうございまーす」」」 「んじゃ、そう言うことだから、緋月またねー」 「………御神くん」 料理部部室(家庭科室)にて 「んーと、そこはもっとこう手早く軽快な感じでー」 「はい、センパイ!」 「あ、そんな力入れちゃダメだよー。趣味の料理なんだし、もっとお気楽極楽にね」 「オレ、彼女に手料理作るためにこの部に入ったです!アイツが『イマドキ料理もできない男なんてダサい』って言うから…!」 「なら、その相手のことを考えて作ってみると良いよー。それだけでも、楽しくなって色々出来ることが見えてくるし。…今朝の俺がそうだったようなそうでなかったような」 「そう言えば御神君!御神君が女の子と付き合いだしたなんてウソよね!」 「…あ、それホント」 「そんなァ!今『御神×葉山』本を書いてるのに!」 「ええっと…、どこにそんな需要が?」 690 名前:ヤンデレの娘さん 交際の巻[sage] 投稿日:2010/09/07(火) 22 58 12 ID eE7Ry3FM [12/15] 部活時間終了後 「うーん、今日もゆるゆるした一日だったなぁ」 「…どこがですか?」 料理部の皆さんと一緒に家庭科室を出ると、後ろから恨めしげな視線が。 「もしかして待っててくれたのー?」 振りかえると、予想に違わず緋月がいる。 あまりの負の念に、料理部員や他の生徒が軽く引いている。 「…見てました、ずっと」 「ウン、何と言うか、ゴメン」 部活時間中ずっとほっぽっちゃってたからなぁ…。 「…そんなに女の子に囲まれたいんですか?」 「人をジゴロみたいに言うなよー。大体、彼女持ちがそんな願望抱くと思う?」 「…お母さんが言っていました。恋人とは蝶のようなもの。その美しさにどれだけ魅了されても、つなぎとめておかなければすぐにどこかへ行ってしまう、と」 「独特なカンジで人差し指を掲げて言うあたり、お前も好きだね。その手のネタ」 大仰なBGMが欲しいところだ。 緋月の瞳からハイライトが消えていなければ、だが。 「…となればこの部活、潰すしか…!」 「逆に潰されるパターンだよな、お前の体力的に」 「うう…」 否定できないのか、黙り込む緋月。 「でも、本当にゴメンねー、不安にさせて」 くしゃ、と俺は愛おしげに緋月の頭をなでる。 「…安い台詞、なのです」 「埋め合わせは、必ずするよ」 「今して下さい」 「時々鋭いよな!」 今回の緋月は、中々機嫌を直さない。 放っておかれたのがよほど嫌だったのだろう。 いやまぁ、緋月の言うことも分からんでも無い。 愛して欲しい相手が他のことにかまけていると、実際はどうあれ、まるで相手から愛されていないような気になってしまうものだ。 ウチは片親で、昔から親が留守がちだったから、その気持ちはよくわかる。 今朝の夢では無いけれど。 「分かった。何が欲しい?」 「御神くんが」 691 名前:ヤンデレの娘さん 交際の巻[sage] 投稿日:2010/09/07(火) 22 58 35 ID eE7Ry3FM [13/15] 瞬時に切り返した緋月の言葉に、一瞬言葉に詰まる。 …うん、聞いてる方が恥ずかしくなる台詞をナチュラルに言ってくれるよな。 「俺はもう上から下までお前のモンだよ。特にご飯とかご飯とか!」 俺は照れをごまかすため、ことさらにおどけて言った。 「なら、その証拠を見せてください」 「何を!?」 「…キス、してください」 …まったく大胆な。 いや、相変わらず頑張りすぎな。 まぁ、どっちにしても恥ずかしい台詞を言わせちゃったのは俺が悪いわな。 今回といい、告白の時といい、何のかんので彼女にリードされっぱなしな気がする。 お前にリードされっぱなしなのは、これっきりにしなきゃな。 俺は返事の代わりに少し身をかがめ、自分の唇と緋月の唇を重ねる。 柔らかい、と当然の感想。 あまりに心地よい感触に、一瞬我を忘れそうになる。 て、言うか忘れた。 主に理性を。 そして、理性を失った欲望が緋月の奥を求める。 「…!」 いきなり俺の舌が口の中に侵入してきて、緋月が驚きに目を見開く。 けれど、それを拒絶することなく、自分の舌とからめる。 何分そうしていただろう、と思った時にふと気がつく。 濃密な触れ合い。 この会話は、部活終了直後から始まっているわけで。 周りには料理部の皆さんだけでなく、他の生徒もいるわけで。 そして、彼らは俺らの姿をガン見してたりするわけで。 「…」 「…」 ええ、もう。 それに気付いた時には恥ずかしさで悶絶しましたよ、二人して。 692 名前:ヤンデレの娘さん 交際の巻[sage] 投稿日:2010/09/07(火) 22 59 02 ID eE7Ry3FM [14/15] おまけ あるいはその夜の通話記録 「チュー!?ディープなチュー!?それも白昼堂々公衆の面前で!?アタシはみっきーのことそんなやらしい娘に育てた覚えはありませんザマスよ!」 「ななななな!?炊きつけたのは朱里ちゃんじゃないですか!?『泥棒猫たちの前でキスの1つでもかませば排除完了っしょ!』ってぇ!?」 「はっはっはっ!そぉんなジョークを真に受けるなんて、みっきーも素直すぎて笑っちゃうな!」 「明らかに『やれ!』的な流れでしたよ!」 「でも、ヤじゃ無かったでしょ? 「…それは、そうですけど」 「だったら終わりよければすべてよし!」 「…。…ところで、そちらはどうだったんです?」 「ウン、お陰さまで久々に正樹と一緒に二人きりで帰れたよ。それもこれもみっきーが御神を引きつけてくれたお陰だね!アイツ、いつも御神と帰ってたんだもの、男同士で何が楽しーのやら。」 「…私も、あの後なし崩し的に一緒に帰れましたから。…恥ずかし過ぎてほとんど会話ありませんでしたけど」 「アハハハハハ!」 「笑いすぎですよぉ!」 「いやぁゴメンゴメン。お互い権謀術数の限りを尽くしてるのにウブでウブで…。こっちも、キンチョーしちゃって気の聞いた会話なんて全然だったよ。…笑っちゃうよね。裏じゃ正樹に胸キュンな女子を噂使って引き離したりと汚いこともしてるのにさ」 「…でも、それは…」 「ま、そだね」 「「それだけ好きだから」」 「…ねぇ、朱里ちゃん」 「何、みっきー?」 「これからもがんばりましょう、お互いに」 「だね」 通話終了